研究課題
最終年度では、従来システムで問題となっていた200Hz以下の不要雑音の影響低減を行った。アンテナへの給電線を非磁性とすることで、パルス磁界によるアンテナ自体の振動を低減した。また、コイル底面にゴムシートを張り付けることでコイルの自励振動のコンクリートへの伝達を抑え、コイル両足の中央に設置するアンテナをコイル両足間に巻いたゴムバンドにより、コンクリートの自重で押さえつけることで、低周波の不要振動を低減しながら、より安定した鋼材の非破壊振動計測を可能とした。さらに、この改善によりコイルを移動させるスキャン計測も容易となり、リニアアクチュータを用いた1点6秒程度の鋼材振動変位の全自動スキャン計測システムを構築した。PCコンクリートのグラウト充填評価に樹脂シース中のPC鋼材の振動のスキャン計測を行った結果、充填率0%では300Hzの鋼材のたわみ振動による共振周波数がより明瞭に計測でき、振動の腹となる供試体中央部ではより大きな振動が確認できるなど、スキャン計測による振動の空間分布計測の有効性も確認できた。さらに、中央部の腐食した鉄筋コンクリート供試体の鉄筋腐食評価にも本手法を適用した結果、鉄筋の加振応答として常に計測される加振直後の極めて鋭いパルス振動のピーク振幅が腐食部位付近で健全部位に比べ数倍程度向上することがわかった。さらに、腐食生成物中の黒錆(マグネタイト)を模擬するため、鉄筋に砂鉄を貼り付けた鋼材に適用した結果、のパルス振動のピーク振幅が砂鉄量に比例して増加することを明らかにした。これにより、腐食生成物中のマグネタイトの量に感度を有する可能性を示唆した。このような、鉄筋腐食による加振応答の違いは広帯域な非破壊振動計測を行う本研究により世界で初めて確認された現象であり、鉄筋腐食の非破壊検査という社会課題の解決に向けた極めて大きな成果であり、今後の飛躍的な発展が期待できる。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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