本研究では,ひったくり等の街頭犯罪の発生をその発生直前に予測検知する超次世代型知的防犯カメラの研究開発を行う.防犯カメラ映像における直近の挙動に基づいて犯行の発生をAI・機械学習技術で予知・予測し、犯行発生直前に大音量警報アラームを発することにより、被害者が鞄・バッグ等を守る&防御する等の対応をとっさに取れば、鞄・バッグ等を奪取され難い状況を作りだすとともに、大音量警報アラームによる威嚇効果を犯人に与え、結果的に犯行を防ぐことにつながると期待される。 そのため,R5年度は人間のモーション予測を実現するシステムの構築と高速処理アルゴリズムの開発を行った。すなわち,機械学習・深層学習を実行する高速計算サーバの整備と開発環境の構築を行うとともに、複数の深層学習アーキテクチャと機械学習システムを組み合わせたひったくり発生予測システムPASCASの実装を行い、いくつかの成果を研究会等で発表した。また、研究成果の査読論文を電気学会論文誌へ発表した。 すなわち、ひったくり発生の予測精度をみると,500 ミリ秒前にひったくり発生を予測する場合は,94.25%の精度で実現できており,次いで600ミリ秒前にひったくり発生を予測する場合は86.75%の精度で実現できた。さらに、予測時間が長くなるほど精度が下がり,900 ミリ秒前にひったくり発生を予測する場合では61.75%の精度となったことから、さらにもう一段の精度向上を図りたい。従って、現時点ではある程度高い予測精度を見込めるのは500 ミリ秒~600 ミリ秒程度までに限られることから、全身反応時間が345 ミリ秒と短い若年層にはひったくり発生予測と事前警告による防御が有効であるが,高齢者を対象とする場合は、さらなる精度向上が必要と言える。
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