研究課題/領域番号 |
20H02409
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古村 孝志 東京大学, 地震研究所, 教授 (80241404)
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研究分担者 |
前田 拓人 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (90435579)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 長周期地震動 / データ同化 / 地震 / 南海トラフ地震 |
研究実績の概要 |
データ同化に基づく大地震の長周期地震動の即時予測に向け、事前に計算した地震波伝播の理論解(同化地点から観測点までの地震波伝達関数;グリーン関数)を用いて、予測地点の地震波を瞬時に評価する、新たなデータ同化・予測手法を開発した。グリーン関数を用いた予測は、津波のデータ同化・予測の目的にWang et al. (2017)が開発し、インド洋や米国西海岸での津波予測の数値実験より有効性が示されている(Wang et al., 2019)が、本手法を長周期地震動の予測に適用するために、1)3次元的に伝播する表面波(長周期地震動)への適用可能性、2)海底ケーブル津波観測点(近い将来に四国沖から日向灘に計画中のN-netを含む)による予測精度・猶予時間の向上、3)同化を行う観測点と長周期地震動の予測地点の空間分布を考慮した、相反定理を利用したグリーン関数の効率的な計算手順を新規開発した。2004年紀伊半島南東沖地震のKiK-net及びK-NET強震記録を用いてデータ同化・予測実験を行い、本手法の有効性を評価し、近年整備された海底ケーブル観測網による即時予測の時間猶予の効果を確認した。そして、内閣府防災担当により構築された南海トラフ最大級地震モデルを用いて、断層破壊開始点(震源)の異なる条件での大阪平野、濃尾平野、関東平野の長周期地震動の即時予測実験を行ない、予測の猶予時間と精度のトレードオフの関係と、繰り返し予測による精度の向上具合について速度応答スペクトル値の時間変化を用いて検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初研究計画に沿って、グリーン関数を活用した南海トラフ巨大地震の長周期地震動即時予測の高度化に向けた研究が順調に進捗し、研究成果が国際学術誌(JGR Solid Earth)に受理された(Oba, Furumura, Maeda, 2020)。本論文はEditor’s Highlightに選定されるなど、研究コミュニティにおいて高い評価を受けた。
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今後の研究の推進方策 |
観測データと地震波伝播シミュレーションの波動場同化に基づく未来の波動場と長周期地震動の予測手法を改良し、ある時刻の同化波動場を初期条件として、時間反転した運動方程式を用いた地震波の逆伝播シミュレーションに基づいて過去の波動場を推定する。これにより、長周期地震動の推定の拘束条件となる震源モデルを地震発生直後に高精度に推定する。また、順方向のシミュレーションと逆方向のシミュレーションを反復することで、波動場の同化と未来・過去の波動場の推定精度を高める計算手法の改良を図る。さらに、観測と計算の残差から、地下構造モデルの物性値の修正を行うなど、長周期地震動予測に向けたデータ同化の高度な活用法を検討する。リアルタイム・連続観測データを用いたデータ同化・予測予備実験を、東京大学情報基盤センターで5月から試験運用されるWisteria/BDEC-01スパコン等を用いて行う。
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