研究実績の概要 |
本研究では,災害対応のDX化と新たな防災教育技術の構築を目指して、災害に関する記述から機械的に因果を抜き出して災害連関図を作成する方法論を確立する.昨年度までは,これまでの災害教訓から得られる膨大な災害事象の網羅的な因果データベースを機械学習を用いて構築し,それを利用して近い将来に起こりうる災害事象をリアルタイムで抽出するものであり(イベントツリー・タイムラインの形),災害発生直後に,定性的ではありながらも,近い将来を予測可能とする目的で開発を進めている. 今年度は昨年度の朝日新聞データのみならず,年次を10年まで拡張し,様々な新聞記事を対象として災害間比較を行った.たとえば、河北新報における台風19号の新聞記事については,精度判定には全体の約5%のテストデータを用い,その結果として,利用した新聞記事の文章数59,537センテンスのうち,因果関係がありそうな文章候補が12,802センテンス見つかった(うち6,406文が手がかり表現による因果文候補,6,396文が継起因果表現による因果文候補).これを用いて因果関係を抽出したところ,抽出された因果関係は3,512となった.この結果,災害の規模が小さいと、災害の大きさが小さいと因果ツリーの抜き出しが少ないことが分かった.今後はワークショップを行うことで,因果データベースを拡充する予定である.また今年度は,発生する事象に重みをつけ,ネットワークの頑健性等を量的に評価することで因果関係を断ち切る効率的な意思決定として重要なChainの切り方を考察した.
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