研究課題/領域番号 |
20H02414
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川池 健司 京都大学, 防災研究所, 教授 (10346934)
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研究分担者 |
山野井 一輝 京都大学, 防災研究所, 助教 (30806708)
武田 誠 中部大学, 工学部, 教授 (50298486)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自然災害 / 減災 / 水工水理学 / 洪水氾濫 / 内水氾濫 |
研究実績の概要 |
氾濫水の挙動に及ぼす建物の影響について,数値解析を用いて検討を行った.まず破堤氾濫を対象とした氾濫解析より,破堤点付近の建物の存在を考慮した場合と考慮しない場合で結果に大きな差が生じたことから,建物の存在を考慮することが重要であることが示唆された.また,実都市の建物配置を再現し,建物内部への浸水を考慮した模型実験を行うとともに,数値解析によりその再現計算を行った.流入流量を変えた3通りの実験を行い,実験では建物内部が瞬時に浸水することなく,建物周辺で浸水深が上昇してから時間差をもって建物内に浸水していく過程を実験上で再現することができた.国交省のマニュアルどおりのモデル,非構造格子による微細格子を用いたモデル,国交省モデルの各格子に建物水深を別途考慮したモデルの3通りで比較したところ,定性的ではあるが,国交省モデル以外の2つは道路に沿って流れる氾濫水の挙動をより適切に再現することができた.しかし,いずれのモデルも,実験結果の再現精度にはまだ改善の余地がある結果となった. 氾濫台を用いて,農地の畦畔と灌漑水路が両方存在する地形を再現し,土砂を含んだ洪水流を与えて土砂の堆積状況を計測した.その結果,氾濫流の主流方向に沿って土砂が堆積し,灌漑水路内部の土砂堆積や,畦畔周辺の3次元的挙動が顕著に見られた.掃流砂と浮遊砂を考慮した1次元・2次元カップリングモデルを構築して,これらの実験の再現計算を行ったところ,全域2次元モデルで解析した場合と比較してほぼ同程度の精度で実験結果を再現することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
建物内部への浸水を考慮した氾濫解析モデルの検証については,実都市での建物配置を再現した模型実験を行い,建物内部への浸水を考慮した氾濫実験を行うことができた.また,数値解析モデルとの比較も行うことができたが,再現精度にはまだ改善の余地がある.また,氾濫原への土砂堆積モデルの検証については,農地を再現した地形での実験を行うことができ,1次元・2次元のカップリングモデルにより宇治川左岸低平地への適用を行うことができた.内水氾濫モデルの高度化については,まだ成果としては得られていないが,研究課題全体としてはおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
建物内部への浸水を考慮した氾濫解析モデルの検証については,実験結果をより高精度で再現できるように解析モデルを修正していく.その上で,建物を集合的に簡易に扱いつつ建物内部への浸水を表現できるようなモデルへの高度化を行い,現行の国交省モデルに代わるようなモデルの提案をめざす. 氾濫原への土砂堆積モデルの検証については,混合粒径モデルを構築する.簡易な地形での土砂堆積実験を行って,その実験結果との比較を通してモデルの高度化を図っていく. 内水氾濫モデルについては,小規模排水路による雨水排水システムを考慮したモデルを構築し,現地の計測データとの比較を行う.
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