研究課題
本研究課題では、先行科研費基盤研究において実績を有する、完全自立航走可能な海上プラットフォームのウェーブグライダーを用いた離島火山観測システムを、より実効性の高い観測装置として完成させるべく継続的な開発研究を進めてきた。先行研究計画下で行なった実海域試験観測によって遠望画像データの重要性を認識したため、本研究計画下ではThuraya衛星を用いたリアルタイム遠望画像データの伝送システムの構築とデータ処理方法の確立に特に注力した。この伝送システムのプロトタイプは、本科研費計画の初年度(2019年度)に完成させ、2020年度は2回の実海域における検証実験を試みた。1回目は、2020年9月末から10月初旬に九州南方50kmに位置する鬼界海底カルデラ火山周辺海域で実施したJAMSTEC調査船「かいれい」(KR20-11)航海中の9月26日から10月4日にかけて、薩摩硫黄島の遠望観測を実施し、リアルタイムでの連続画像の伝送に成功した。その2日後の10月6日に薩摩硫黄島が噴火したと気象庁が発表したが、それよりも前の10月4日の伝送画像において火口付近において明瞭な噴煙活動が確認されており、リアルタイムでの遠望観測の重要性を再認識した。また2回目は、2020年12月下旬に実施したJAMSTEC「かいれい」(KR20-E06)航海を利用し、2013年11月から断続的にも活発な活動継続している東京都西之島新島周辺海域において1回目とほぼ同様のシステムで観測を実施した。今回は12月24日に西之島近海で装置を投入した後、翌年1月13日までの約3週間に及ぶ自律航走観測を実施したが、海上投入直後に発生した大型低気圧下に伴う波浪を受け、画像データ伝送が断絶した。観測システムは父島近海まで自走させ、父島漁協の漁船「神源丸」により無事に回収され、伝送システムの破損状況から構造的に潜在する問題が判明した。
2: おおむね順調に進展している
2020年12月末から翌年1月初旬に実施した東京都西之島新島近海での自律航走観測初期に発生した低気圧通過に伴う波浪により、今年度最も注力した画像伝送システムの破損した。事前に行った薩摩硫黄島周辺海域における試験的な観測での成功を受け臨んだ本観測であったが、海象の急激な変化に伴う大波浪に弱い構造上の問題点が明らかとなった。これは構造上の潜在的問題点を見直す契機となり、再設計のための経費を翌年度に繰越した。
2020年12月末から翌年1月初旬に実施した東京都西之島新島近海での自律航走観測初期に発生した低気圧通過に伴う波浪により、今年度最も注力して開発した画像伝送システムの破損を招いた。事前に行った九州の薩摩硫黄島周辺海域における試験的な観測での成功を受けて臨んだ本観測であったが、冬季の海象に想定すべき急激な変化に伴う大波浪に対し、本システムにおける構造上の弱点が明らかとなった。これは構造上の潜在的問題点と指摘されるものであり、再設計を行う方針である。一方で、上述の西之島周辺海域での観測中に取得したハイドロフォンおよび2台の空振記録解析を進めている。画像伝送システムで取得した西之島遠望観測データには、明瞭な噴煙活動が収録されており、これとの比較検討は、本科研費研究の最終的目標の一つであるリアルタイムでの離島火山活動のモニタリングにおいて重要な課題と位置づけられ、今後特に推進していく予定である。
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Frontiers in Earth Science
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