研究課題
2021年度は、先行科研費研究から実施してきた離島火山観測システムにおける技術開発研究と、本システムによるリアルタイムでの監視手法の確立を目指して、昨年度までに実海域観測によって得られたデータ解析を行った。2020年度は、2回の実海域実験を行なったが、そのうち東京都の離島火山の西之島新島近海(火口中心5km圏内)実験では、2020年12月24日から2021年1月13日までの約3週間ほど完全自立航走観測を実施した。この観測では、カメラによる遠望画像(リアルタイム伝送)、ハイドロフォン1台とマイクロフォン2台(いずれもオフライン)による水中および空中の音波波形記録を取得した。遠望画像は観測直後の低気圧通過に伴う波浪によって伝送が断絶するまでの短期間のみのデータ回収となったが、12月24日から25日、12月30日から1月1日および1月6日における画像では、明瞭な噴煙・噴気活動が認められた。一方、ハイドロフォンおよびマイクロフォンにはこれらに対応する孤立波が記録されていたが、両振幅は10kPaを超え、2台のマイクロフォンの時間差から火山活動に伴うシグナルとは考え難く、シグナルの原因を追求のため詳細な解析を行った。結果として、使用したマイクロフォンセンサーでは音響振動によるエレクトレットコンデンサ電極の変位が電位差として計測するという原理上、推進機構である水中グライダーのフリップ振動周波数(1秒程度)とが同調した場合、振幅における非線形応答にる見かけの変動となる。今回の火山噴火活動によって励起された音波は1秒程度が卓越していたため、観測された両振幅が4kPaを超えるシグナルはこれに依る非線形応答であると判断した。一方、マイクロフォン信号感度がハイドロフォンと同程度であること、また水中での観測環境を鑑み、大気・水中音波共にハイドロフォンによる計測の合理性についても議論した。
2: おおむね順調に進展している
2021年度は、これまで実海域観測で得られたデータ解析に注力し、研究実績概要欄で述べたように、観測手法における重要な結果が得られた。この結果に基づき、今後の方策を検討した。
研究実績概要欄で述べたように、ウェーブグライダーの推進機構の特性から、火山噴火活動に伴う大気・水中音波信号の非線形応答への対応が必要である。その一方で、海上での遠望観測と通信プラットフォームとしての機能を強化するべく開発研究にシフトする必要性を感じている。前者については、来年度(2022年2月)にJAMSTEC調査船「よこすか」(YK23-02)航海中に実施を予定している、東京都三原山を有する伊豆大島近海での観測に向けた開発が目下の目標となる。それに向け、最近開発された高精度CMOSセンサーを装備した防水タイプのカメラ(ATOM CAM)を採用することを検討している。また、後者については、グライダーの振動周波数を回避した低周波変動をターゲットとする。例えば、海底下地殻変動や火山性津波、さらには地震に伴う重力場変化によって生じる長周期振動が想定される。そのためにもまず、ウェーブグライダーの海上フロート部に装備する、音響通信装置(EvoLogic音響モデムあるいは海洋電子SI-2モデム)の開発研究を行う計画である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 9件)
Communications Earth & Environment
巻: 2 ページ: -
10.1038/s43247-021-00169-9
Journal of Geophysical Research: Solid Earth
巻: 126 ページ: -
10.1029/2021JB021918
10.1029/2021JB022132
Scientific Reports
巻: 11 ページ: -
10.1038/s41598-021-99833-5
Geophysical Research Letters
巻: 48 ページ: -
10.1029/2021GL095915