研究課題/領域番号 |
20H02421
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
栃木 栄太 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (50709483)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 双晶 / その場観察 / TEM/STEM / 機械試験 |
研究実績の概要 |
今年度の主な成果は以下の通りである。 (1)サファイヤにおける菱面双晶の原子挙動解析:サファイヤ(α-Al2O3)単結晶における{1-102}<-1101>菱面双晶に関して、母相/双晶界面にはb=1/21.9<-1101>に相当するステップ構造が形成される。走査透過型電子顕微鏡(STEM)によるステップ構造の原子構造観察結果を元に、理論構造を構築し、第一原理分子動力学法によりステップ構造の移動に伴う原子挙動を評価した。詳細な解析の結果、ステップ構造の移動には5つの原子からなる原子集団が協調的に運動(シャッフリング)し、各原子の変位はわずか<0.1nm程度であることが明らかとなった。また、この原子の協調的な運動に伴い再構成されるAl-O結合は3本のみであることが明らかとなり、原子結合の再構成を極力少なくなるようなシャッフリングモードが誘起されていることが示唆された。 (2)荷重負荷デバイスの作製プロセスの検討:本研究ではMEMS技術により作製した荷重負荷デバイスを利用したその場TEM機械試験を実施する計画である。本年度は定期的にクリーンルーム内作業を実施し、フォトリソグラフィ、エッチング、洗浄、深堀反応性イオンエッチング等のデバイス作製プロセスの諸条件の検討を行った。今後も引き続きプロセス条件の検討ならびにデバイスの試作を進め、次年度上半期にプロセス開発の完了することを目指す。 (3)収差補正高分解能TEM法による動的観察条件の検討:高分解能TEM法は0.1nm程度の空間分解能を有し数百フレーム/秒での高速観察が可能な手法である。本観察手法によりその場機械試験を実施する先だって、電子線電流値、観察倍率、フレームレート等の観察条件の検討を行い、所望の空間・時間分解能にて観察を実施する目途が立った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度において、荷重負荷デバイス作製プロセスや高分解能走査型電子顕微鏡による高速観察実験の諸条件の検討が比較的順調に進み、その場機械試験による双晶の導入と動的観察実験を開始できる体制が整ったと評価できるため。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は以下の3つの研究項目を中心に進める計画である。 (1)その場観察実験用の駆動デバイス制御ソフトウェアの開発:本研究では微小電気機械システム(MEMS)技術を用いて作製した静電アクチュエ ータを利用する。昨年度から引き続き本アクチュエータを高度に制御するソフトウェアの開発を進める。適宜検証試験を行い、結果をフィード バックしながら仕様変更、機能の改良等を行う。 (2)TEM内その場観察観察実験の実施:金属試料を用い、透過型電子顕微鏡(TEM)内にて荷重負荷試験を行い、変形双晶の形成過程の原子分解 能観察を行う。観察モードは空間分解能に優れる高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡法(HAADF-STEM)並びに時間分解能に優れる収差補正高 分解能TEM法(HRTEM)を併用し、双晶形成に関する包括的なデータ取得を進める。 (3)データ解析法の検討:本実験にて得られる主たるデータは大容量の時系列画像データである。それらより情報の抽出を効率的に行うための 解析用ソフトウェアの開発を見据え、解析アルゴリズムの検討を行う。
|