磁性体に応力を印加すると磁気的性質が変化する現象は逆磁歪効果と呼ばれ、それを利用した振動発電は身の回りの振動から無線送信が可能な電力を高効率に発電できるため、革新的なエネルギーハーベスティング技術としてIoTデバイス用の小型電源としての応用が期待されている。本研究では、比較的小さな磁歪定数の鉄基合金の逆磁歪効果の発現機構を明らかにすることにより、新材料の設計指針を得ることを目的とする。 本年度は、現在最も有望なユニモルフU字型デバイスを用いて、逆磁歪材料の有効な設置方法を検討した。このデバイスでは、強磁性のU字型フレームに逆磁歪材料を貼り付けたユニモルフの梁に、空芯コイルを取り付け、U字型の開口部に永久磁石を設置する。永久磁石から外に漏れた磁束は、U字型フレームを通り再び永久磁石に戻る。このU字型フレームの磁気回路を介して、逆磁歪材料に比較的均一にバイアス磁場が印加される。比較的小さな正の飽和磁歪を示す鉄基合金としてFe-Ni合金を用い、それをU字型フレームの表側および裏側に貼り付けたデバイスを作製した。また、ユニモルフの梁を強制的に振動させて発電試験を行った。その結果、Fe-Ni合金を表側に貼り付けたデバイスは、裏側に貼り付けたデバイスよりも大きな電圧を示した。発電試験において、ユニモルフの梁を振動させるとフレームと永久磁石の距離が変化するので、逆磁歪材料に印加されるバイアス磁場も変化する。つまり、Fe-Ni合金を表側に貼り付けたデバイスでは、逆磁歪効果に起因した磁束密度変化がバイアス磁場の変化により増強されたことが示唆される。
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