研究実績の概要 |
本研究では新規高温型形状記憶合金の開発を目指しており,本年度は以下の2項目について重点的に調査した。(1)等原子比組成ZrCu形状記憶合金の引張変形と熱サイクルによる組織変化:引張変形材において,(101)B19’および(201)Cm変形双晶が観察され,さらに [312]CmTypeII変形双晶も存在していた。熱サイクル材においては,(101)B19’および(201)Cm変形双晶が観察されるとともにCm相のバリアントがB19’相のバリアント界面を侵食するように存在していた。さらにバリアントの内部欠陥として(001)Cm積層欠陥や(001)Cmcomp.双晶も存在していた。これらは応力負荷に伴いB19’構造からCm構造への変態が生じており,これは歪緩和のための原子変位機構によるβ角度や格子定数の変化に起因したものと考えられる。(2)Ti-Ni-Zr合金マルテンサイト相の自己調整構造と変形組織:Ti30Ni50Zr20合金は100℃以上の変態点を有し,室温にて単斜晶B19’構造のマルテンサイト相を呈しており,格子定数はa = 0.3074 nm, b = 0.4086 nm, c = 0.4916 nm, β= 103.64°であった。また晶癖面は{011}B19’//{100}B2近傍であり,幅1~2μmの多角形およびプレート状の晶癖面バリアントを形成しており,その界面には{011}B19’双晶が形成され,内部欠陥として(001)B19’comp.双晶が導入されていた。引張変形に伴いMosaic状の自己調整構造が変化したが,バリアントの再配列や単一化は生じなかった。また(100)B19’comp.双晶が導入されていた。以上の結果から,内部欠陥として(001)B19’comp.双晶を有する合金は,バリアントの再配列等が生じず形状回復率が低くなると予想されるため,これら双晶の制御が極めて重要である。上記一連の研究成果について,研究論文2本,国内学会発表:2件,学生発表受賞:1件など十分な結果を出すことができた。
|