研究課題/領域番号 |
20H02434
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
飯村 壮史 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (80717934)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 半導体 / 発光ダイオード / 材料探索 / 第一原理計算 |
研究実績の概要 |
まず歪んだ岩塩型構造を有するハライド系のナローギャップ半導体においてバンド端におけるオレンジ色発光を確認した。はじめに第一原理計算から直接遷移型のバンド構造とバンド端において大きな光吸収係数を有することを確認し、発光半導体として有望であることを確認した。また、正孔と電子の有効質量が0.4me、0.3meであること、それからバンドギャップが2eVでVBM、CBMは真空準位よりも5.6eVおよび3.6eVであり輸送特性としてもすぐれていることを確認した。育成した単結晶から取得した20KでのPLスペクトルは、拡散反射スペクトルから見積もったバンド端位置~2eVにおいてシャープな発光を示した。CsPbBrI2ハライドペロブスカイトと比較してもPLスペクトル幅は非常に狭く、半値幅は16nmほどになった。しかし、内部量子効率は1%以下と非常に低い値となった。次に閃亜鉛鉱型構造に類似した新規ワイドギャップ半導体において赤色発光を確認した。試料は固相法により合成した。バンドギャップは3eVほどで直接遷移型であることが第一原理計算から分かった。しかし、実際の発光は1.8eVにおいて確認され、発光の起源としてはドナーアクセプタ発光等の不純物由来であると考察した。しかしながら内部量子効率は最大で10%となり比較的高い値が得られた。キャリアタイプはp型であり、キャリア濃度はドーピングの程度に応じて10^14-10^18cm^-3と変わることが分かった。移動度は最大で5cm^2/Vsとなり、ワイドギャップのp型トランジスタへの応用が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歪んだ岩塩構造中の非結合性軌道に着目しバンド端発光する材料を見出すことが出来、また、室温で発光する新化合物も得られたため、おおむね順調に進展していると言える。しかし、発光を阻害する欠陥が生成していると考えられ、量子効率は高くない。これはイオン価数の小さな元素を用いているためと考えられ、今後の方針としてはより価数の大きな金属イオンとアニオンから成る半導体に着目し機能開拓する必要があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
第一原理計算を用いて電子状態をベースとしたターゲット材料のスクリーニングによって赤外域において高いバンド端吸収係数を持ちつつ、電子と正孔共に小さな有効質量を持つ炭化物系材料を見つけることが出来た。年末より高周波炉を用いた固相合成に取り掛かり、温度と出発原料を変えながら最適条件を探したところ、金属水素化物を出発原料に用いることで単相試料を得ることが出来た。本年度初頭は坩堝の改良やメタンフロー下でのポストアニール等による欠陥量の低減に取り組む。発光特性は800nmのパルスレーザーを励起光とし、InGaAsのPINダイオードを用いて評価する。また電気抵抗やキャリア極性等の電気輸送特性は四端子法やホール測定、ゼーベック係数測定を用いて評価する。
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