研究実績の概要 |
本研究は,Ni-O無限構造をもつニッケル酸塩結晶について,平面正方配位NiO4型の無限層構造を含むエピタキシャル薄膜創製,その構造・物性における異原子価イオンによるLa3+置換効果の解明を目的とし,非平衡条件下の薄膜合成および固相反応による相選択的なエピタキシー,および構造・カチオン価数と物性制御について検討した。 パルスレーザ堆積によりRuddlesden-Popper(RP)相Lan+1NinO3n+1薄膜(n=2,3,∞)を層状ペロブスカイト型LaAlO3(001)単結晶基板上に作製した。本年度は無限層構造を形成するn=∞結晶に着目し、以下の成果を得た。RP相LaNiO3(001)エピタキシャル薄膜では、La3+を置換する4価ドーピング(Hf4+等)によりc軸が伸長し、エピタキシャル歪および静電反発を示す結果を得た。温度に対する金属的な抵抗率変化に対して、4価ドーピングと電子キャリア導入による~2倍程度の導電率向上を得た。また、膜厚増大による導電率低減から、エピタキシャル歪をを含む界面近傍の擬立方晶(Ni-O-Ni角~180°)から、欠陥導入と歪緩和による三方晶(Ni-O-Ni角~165°)への構造変化を示す結果を得た。LaNiO3 (001)エピタキシャル薄膜の400°C以下のH2熱処理により、平面正方型配位構造をもつT’型LaNiO2(100)薄膜へのトポタキシャル還元を得た。LaNiO2の抵抗率ー温度特性は半導体的挙動を示し、LaNiO3における配位構造の頂点Oイオン欠落に伴いNi eg軌道の非縮退化と符合する結果を得た。 La3Ni2O7 (001)エピタキシャル薄膜に対するH2熱処理では、面内構造が維持された一方、c軸の僅かな収縮が得られた。T’型結晶への完全な還元遷移には、より強い還元が必要であった一方、酸素脱離の進行を示す~102程度の導電率低減を得た。
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