研究課題/領域番号 |
20H02437
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
畑田 直行 京都大学, 工学研究科, 助教 (00712952)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | プロトン伝導セラミックス型燃料電池 / PCFC / 二酸化炭素 / 二酸化硫黄 / 過電圧 |
研究実績の概要 |
本研究では、プロトン伝導セラミックス型燃料電池(PCFC)の酸素極へ実際の空気を供給した際に起こる微量ガス種(CO2, SO2など)の吸着現象・副反応と、それが電極反応へ及ぼす影響を、電気化学測定および熱力学解析を駆使して明らかにすることを目的としている。また、その結果に基づき、微量ガス種による電気化学反応阻害を防止し、空気を用いて安定的に発電するためのPCFC電極・電解質の材料選択指針および動作条件指針を提案し、実証することを目指している。 令和4年度は、O2分圧とCO2分圧を制御したAr-O2-CO2混合ガスをフローしながらLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ (LSCF6428) 試料の熱重量測定を行い、試料の上流側および下流側のO2とCO2の濃度を同時に測定することで、LSCF6428とガスとの反応にかかる物質収支を詳細に調査した。具体的には、900℃から500℃まで100℃ごとに降温する過程で、CO2を含まない雰囲気では、LSCF6428中の酸素濃度の増大に由来すると思われる重量増加が見られた(過去の報告と同程度)。一方、CO2を1000 ppm含む雰囲気では、700℃以下において、0.1重量%以下の微量ではあるがより大きな重量増加がみられ、これはLSCF6428とCO2の反応に由来すると考えられる。このように、O2分圧とCO2分圧に応じて、LSCF6428中の酸素濃度の変化とLSCF6428とCO2との反応の両方が起こることを明らかにし、それらを分離して定量することができた。なお、LSCF6428とCO2の反応量は、LSCF6428表面にCO2がたかだか1分子層程度均一に付加する量に相当し、これはX線回折やEPMAなどの分析手法では検出が難しい微量であり、精密な熱重量測定により初めて検出できたものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度は、年初の計画のうち反応にかかる物質収支の把握に関して、「研究実績の概要」に示したように2種類の反応の分離定量に成功し、有意義な知見が得られた。一方、熱重量測定装置のヒーター部の故障などにより、La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ (LSCF6428) 以外の組成の電極材料に関する実験が予定通り進捗しなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、引き続き熱重量測定を主な手法として、LSCF6428以外にLSCF中の構成元素(金属元素および酸素)の濃度が異なる試料および別の代表的電極材料を用いて、CO2との反応に主に寄与する固体成分や酸素空孔の影響を明らかにする。また、赤外分光など表面分析手法により、表面反応の微視的理解を試みる。これらにより、電極材料の表面でのCO2との反応抑制のための合理的な指針を得ることを目指す。
|