研究課題/領域番号 |
20H02440
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
末國 晃一郎 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (10582926)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 熱電変換 / 熱電物性 / 銅硫化物 / 熱伝導率 / 出力因子 |
研究実績の概要 |
本研究では,銅-硫黄四面体ネットワーク構造を有する物質を対象として,その局所構造が熱電物性に与える影響を調べると共に,得られた知見を基に性能が飛躍的に高い材料の創製を目指すものである。本年度は,そのような物質の一種であるコルーサイトCu26T2M6S32に対して,以下に示す二つのテーマで研究を実施した。 (1)四面体ネットワーク中の格子間原子が格子熱伝導率に与える影響を調べた。具体的には,T=V, M=Geの系で,化学量論比に対して銅原子を増やした試料を合成し,その過剰な銅原子が格子間に位置することを走査型透過電子顕微鏡観察とX線回折実験により確かめた。次に,格子間銅原子を含む試料と含まない試料を比較することにより,格子間原子の存在が格子熱伝導率抑制をもたらすことを実験的に明らかにした。この銅原子の導入は同時にホールキャリア濃度の調節も可能にし,結果として無次元性能指数を673 Kで0.8まで高めた。 (2)これまでの研究から,Cu-T間の金属的結合が電気的特性に影響を与える可能性が指摘されていた。この点について検証するために既存の系と比較する対象として,Tがこれまでと異なる,具体的にはT=Ti, M=Sbを合成した。この系は半導体であるが,そのSbをGeで置換すると,ホールキャリア濃度が増大し,電気抵抗率は低下した。さらに,置換により格子熱伝導率が下がったために,無次元性能指数は673 Kで0.9に達した。この系の合成・焼結条件の決定と熱的安定性の調査のために,本課題で導入した熱重量/示差熱分析装置が中心的な役割を果たした。また,電気伝導機構を調べるために導入したHall効果測定用温度可変チャンバーの調整を終え,室温でのホールキャリア濃度およびHall移動度を調べるとともに,高温における予備的な測定を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主目的の一つとして掲げた,銅-硫黄四面体ネットワーク構造における局所構造が格子熱伝導率に与える影響の調査に関して,上述した通り,コルーサイトCu26T2M6S32を対象として,格子間原子の存在が熱伝導率抑制をもたらすことを明らかにした。この知見は,同様の四面体ネットワーク構造を有する他の銅-硫黄系物質の熱電性能向上に資すると期待される。また,局所構造が電気的特性に与える影響の調査に関して,既存の系と比較可能なものとしてT=Tiの系を合成した。この系にホールキャリアをドープした試料は,673Kにおいて銅-硫黄系の中で最大級の無次元性能指数を示すことを明らかにした。また,今後電気伝導機構を議論するために必要なHall効果装置の立ち上げも,上記の通り順調に行えている。以上の進捗状況により,本研究課題は順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに合成した物質(コルーサイト)および得られた知見を基にして研究を進める。具体的には,銅-硫黄系物質に対して格子間原子を導入することにより格子熱伝導率を低減させて無次元性能指数の向上を目指す。また,局所構造が電気的特性に与える影響を調べるために,例えば様々なコルーサイトについて結晶構造とHall移動度を調べ比較する。さらに,コルーサイト関連物質などにも研究対象を広げ,銅-硫黄四面体ネットワーク構造における局所構造が熱電物性に与える影響の普遍性について検証する。
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