研究課題/領域番号 |
20H02445
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
浅沼 周太郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (30409635)
|
研究分担者 |
武貞 正樹 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (30311434)
齊藤 雄太 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (50738052)
森田 行則 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ長 (60358190)
太田 裕之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ長 (70356640)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 強誘電体 / HfO2 / 薄膜 / ドメインエンジニアリング / バンドエンジニアリング / 光学特性 / 第二高調波 |
研究実績の概要 |
我々は本課題の目標を達成するために(1)バンドエンジニアリング及び(2)ドメインエンジニアリングの二つの観点からHfO2系強誘電体の特性と関連の大きいパラメータの探索を行った。また、作製した試料について電気特性及び光学特性の二つの面から評価を進めた。 バンドエンジニアリングからのアプローチではパルスレーザー堆積法(PLD法)を用いて薄膜試料の成膜を進めている。La0.7Sr0.3MnO3膜を下部電極層として成膜したSrTiO3(110)基板上にエピタキシャルHf0.5Zr0.5O2膜及びYドープHfO2膜を成膜することに成功した。現在、これらの試料に複数金属元素を共添加することでバンド構造を制御する手法について研究を進めている。また、バンドエンジニアリングに関する研究の一環として室温で酸素欠陥を低減する手法についても研究を進めており、一定の成果が出ている。 ドメインエンジニアリングからのアプローチでは、スパッタ法を用いて成膜したHf0.5Zr0.5O2膜のポーリング時のリーク電流とポーリング後のリーク電流の差異に関する研究を行った。この研究の結果、ポーリング後のリーク電流がプール=フレンケル型電流なのに対し、ポーリング前の電流は非プール=フレンケル型電流ことが明らかになった。この結果はポーリング時に酸素欠陥の再配置が生じていることを示唆しており、HfO2系強誘電体の特性に酸素欠陥が大きな役割を果たしていることを示唆している。 また、膜厚30nmと50nmのHf0.5Zr0.5O2薄膜のラマン散乱スペクトルの温度依存性を観測した結果、膜厚30nmの試料では約800K、膜厚50nmの試料では750Kでフォノン異常が観測された。この異常は強誘電体相転移を示唆するものである。さらに、Hf0.5Zr0.5O2薄膜の厚さが薄くなるにつれて転移温度は高温側にシフトする傾向が観察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バンドエンジニアリングからのアプローチについては、YAGレーザーを用いたPLD法でエピタキシャルHf0.5Zr0.5O2膜及びYドープHfO2膜を成膜することに成功している他、室温で酸素欠陥を低減する手法についても研究が進んでおり、順調にHfO2系強誘電体のバンド制御の要素技術の開発が進んでいる。 ドメインエンジニアリングからのアプローチについては、ポーリング時のリーク電流特性の変化から強誘電特性において酸素欠陥が重要な役割を果たしていることが明らかになって来ており、Endurance特性等を向上させるためにどの点に注目してドメイン制御を行えばいいかの指針が明らかになりつつある。 光学特性からのアプローチにおいてもラマン散乱スペクトルの測定で強誘電相転移の兆候の観察に成功しており、HfO2系強誘電体の強誘電相転移の機構をフォノンダイナミクスの観点から明らかにする準備が整って来ている。
|
今後の研究の推進方策 |
バンドエンジニアリングからのアプローチについては、エピタキシャルHf0.5Zr0.5O2膜及びYドープHfO2膜に複数のドーパントを共添加する他、酸素欠陥量を制御することでバンド制御を行うと共にEndurance特性等の向上を目指す。 ドメインエンジニアリングからのアプローチについては、ドメイン制御により酸素欠陥の再配置を抑制することでEndurance特性等の向上が可能か等について研究を進める。 光学特性評価からのアプローチについては、より大きなラマン散乱スペクトルを得るためにエピタキシャル薄膜を使用した測定を行い、強誘電相転移のフォノンダイナミクスの解明を進める。
|