研究課題/領域番号 |
20H02446
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
三村 憲一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (20709555)
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研究分担者 |
板坂 浩樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (30816468)
安井 久一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (30277842)
劉 崢 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 上級主任研究員 (80333904)
高田 瑶子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (00805640)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | チタン酸バリウム / ナノキューブ / 超薄膜コンデンサ / 規則配列集積 / グラフェン電極 |
研究実績の概要 |
チタン酸バリウムナノキューブの基礎物性の理解を目的として、ナノキューブ単層膜を誘電層とするコンデンサ構造を作製し、その基礎物性の評価を行った。具体的には、キューブ間の隙間によるリークを防ぎ、単層膜の電気特性を評価するため、グラフェン/金属複合上部電極を形成し、特性評価可能な単層膜コンデンサ構造を得た。このコンデンサ構造について、断面TEM観察を行ったところ、グラフェンの無い構造では、蒸着した金属電極の微粒子がチタン酸バリウムナノキューブ同士の隙間に存在していたことが確認されたのに対し、グラフェンを挿入した電極では、金属微粒子のナノキューブ層への侵入を抑制できていることが確認された。また、このような単層膜コンデンサ構造を形成するためには、ナノキューブ粒子の粒度分布及び分散液濃度を精密に制御する必要があるため、ナノキューブ分散濃度測定装置を導入し、分散濃度の評価を行った。緻密かつ大面積なナノキューブ単層膜を得るためには、分散濃度が10^15 個/mlオーダー以下でないと単層膜構造が得られないことを明らかにした。このようにして得られた単層膜コンデンサにおける物性評価を行うにあたって、通常のプローブでは誘電特性評価が困難であるため、走査プローブ顕微鏡を利用した測定システムを構築した。さらに、チタン酸バリウムナノキューブ単層膜における圧電応答を走査プローブ顕微鏡により評価したところ、電界印加による分極反転挙動を示し、チタン酸バリウムナノキューブ単層膜の強誘電性を示唆する結果を得た。 今後、多層膜ならびに単層膜コンデンサの誘電率等の基礎物性を評価し、その基礎的な物性値を用いてチタン酸バリウムナノキューブにチューニングされたギブスの自由エネルギー理論式の構築を行い、ナノキューブの界面形成指針のための特性予測の検討を開始する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チタン酸バリウムナノキューブの合成プロセス条件の最適化並びに、本年度導入したナノキューブ分散濃度測定装置により、ナノキューブ規則配列単層膜の大面積化と緻密化が可能な分散液の基礎的物性を明らかにすることができた。また、グラフェンの積層数や上部電極の蒸着条件の最適化により、リークパスを抑制可能な単層膜コンデンサ構造の作製が可能となった。しかしながら、通常の誘電特性評価用のプローブでは、誘電体層の膜厚が15 nmと非常に薄いため、接触した際に誘電層を突き抜けて下部電極と接触してしまうことが課題として抽出された。そのため、走査プローブ顕微鏡の導電性カンチレバーを用いることによる評価システムを構築し、その実証を行ったところ、既知の誘電特性を有する薄膜試料において、通常のプローバーを用いた時と同等の値を示すことが確認されたため、評価システム自体の浮遊容量などの問題はクリアできていると考えられた。今後はこのシステムを用いて、多層膜および単層膜コンデンサの誘電特性評価と計算科学的手法への展開を進める。
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今後の研究の推進方策 |
単層膜コンデンサの誘電特性評価を進めるとともに、その結果を用いたギブスの自由エネルギー理論式の構築を行い、ナノキューブの界面形成指針のための特性予測の検討を開始する。また、ナノキューブ同士の間は隙間が依然として存在するため、その隙間を緻密化させる手法の開発について検討を開始する。緻密化した界面が特性に及ぼす影響を微構造観察や計算を通じて評価解析を行い、特性予測および制御に反映させる。
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