グラフェンやその誘導体は優れた電気伝導特性や電気化学特性を持つ二次元材料であり,多くの応用が期待されている.本研究では酸化グラフェン(Graphene Oxide: GO)が持つ触媒活性を半導体のウェットエッチング技術に活用することで,半導体プロセスの発展に寄与することを目的にしている.我々はシリコンウェハにGOシートを担持した試料を適切な組成のエッチング液に浸漬すると,GO被覆部分が優先的にエッチングされること(GOアシストエッチング)を発見した.特に本課題ではGOの反応活性解明と半導体表面への構造形成に焦点を当てている.令和4年度の研究では以下の点において成果を得た. 1. フッ化水素酸と酸化剤(過酸化水素や硝酸)の混合溶液から発生する蒸気を用いた気相エッチングをGO担持シリコン基板にて行った.エッチング後試料の表面・断面観察の結果,GO被覆部の優先的なエッチングが示された.液相エッチングと比較すると,フッ酸と過酸化水素を用いた系では気相の方がエッチング速度が増大した.また,蒸気源となる溶液組成の調整により,基板表面へのポーラス層形成が抑制された. 2. アシストエッチングの触媒材料として二硫化モリブデンと二硫化タングステンのナノ結晶の活用を試みた.エッチング後のシリコンウェハ表面観察の結果,ナノ結晶のサイズに概ね類似した径を持つ孔形状が得られた.遷移金属ダイカルコゲナイドなど,他の二次元材料でもアシストエッチングが可能になることが示唆された. 3. フッ化水素酸と硝酸からなる溶液を用いた液相エッチングにおいて,フッ酸濃度に依存したエッチング挙動を調査した.一定以上に希釈したフッ酸を用いた場合ではGO被覆部・非被覆部ともにエッチング反応が遅くなる傾向が得られた.また,硝酸還元反応の律速過程である亜硝酸生成に着目したエッチング液組成探索の可能性が示唆された.
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