研究課題/領域番号 |
20H02451
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小澤 隆弘 大阪大学, 接合科学研究所, 助教 (40734158)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 水蒸気 / 固体電解質 / ナノ粒子 / 結晶化 / 多孔質粒子 / 微構造制御 / 粒成長 |
研究実績の概要 |
本研究では,酸化物表面での水酸基形成と脱水縮合反応を誘起させる加熱反応場の水蒸気に着目し,リチウムイオン電池の電極活物質と酸化物系固体電解質の固固界面接合を水蒸気焼成で実現することを目的とする。令和2年度は,酸化物系固体電解質として注目されているLi1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3(以下,LATPと称す)の非晶質化を伴う超微粒子化を行い,水蒸気焼成による結晶化挙動を調査した。高エネルギー粉砕機である遊星ボールミルを用いてLATP粉体を粉砕し,粒子径が10 nm以下の非晶質ナノ粒子を得た。大気焼成ならびに水蒸気焼成で得られた試料の粉末X線回折,種々の分光分析により結晶化挙動を調査するとともに,熱重量分析と発生ガスの質量分析の同時測定を試みた。その結果,非晶質LATPナノ粒子表面には,超微粒子化の際の溶媒やその分解生成物が強く結合していることを明らかにした。結晶化反応においては,焼成場に導入した水蒸気がLATPの結晶化を低温から生じさせ,粒成長を促すことを見出した。これは,水蒸気焼成条件に応じて固体電解質ナノ粒子のサイズ制御が可能であることを示唆する。本研究成果は,電極活物質との均質な複合電極粒子の作製を可能とする固体電解質ナノ粒子の調製方法や低温接合プロセスを提示すると期待される。 加えて本年度には,水蒸気焼成で促進される粒子間接合や粒成長を応用した多孔質電極粒子の作製にも展開した。水蒸気焼成により得られた多孔質粒子の微構造設計を通じて,電極性能の向上を図った。その結果,多孔質粒子の細孔構造を活かした微構造制御により電極のサイクル性能が向上する知見を得た。 一方,水蒸気雰囲気下での酸化物の焼結を行い,酸化物表面で展開される水蒸気作用の基礎学理構築を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスによる研究活動の制限や設備導入時期の後倒し等が生じたものの,固体電解質ナノ粒子の調製と水蒸気焼成による影響に関する研究に重点を置くことで着実な研究遂行を心掛け,一定の成果を挙げることができた。本成果に関しては年度末にオープンアクセス誌へ投稿した。一方,年度後半から電極活物質への展開や水蒸気作用の基礎学理構築にも着手できたことから,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに作製した10 nm以下の固体電解質超微粒子を用いて正極活物質粒子との複合化を行い,水蒸気焼成による低温接合を実施する。電気化学特性の評価を通じて,固体電解質と活物質の重量比を検討する。Li金属を対極とする全固体電池を試作し,その性能評価を行う。並行して,酸化物表面での水蒸気作用を酸素同位体や固体NMR等を用いて解析する。 また,令和2年度は研究遂行に注力するため学会発表を控えていたが,今後は積極的に研究成果の公表を行う。
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