研究実績の概要 |
申請者は, 細胞毒性の低い元素から構成され,低ヤング率・高強度を備えたTiNbSn合金を開発した.生体内ではトライボコロージョンにより金属イオンや摩耗粉が放出され,生体への悪影響が指摘されている.そこで,TiNbSn合金に陽極酸化を施しトライボコロージョン特性を調査した.プラズマ溶解したTiNbSn合金(Ti-22.0 at. % Nb-2.1 at. % Sn)を1423 K_24 h /1223 K_2 hにて真空中で熱処理後に, スウェージング加工, 溝ロール圧延を施して厚さ1 mmの板材を作製した. これを25 mm角の板に切り出し, 酒石酸Na水溶液にH2O2を添加した電解浴中にて電流密度50 mA/cm2で1, 5, 10, 30分間の陽極酸化を施した.組織観察と表面分析を行った後,開回路電位(OCP)を計測しながらfretting条件で往復摺動摩擦摩耗試験を行い, 摩擦係数(COF)を測定した. 【結果】トライボコロージョン試験の結果,未処理材のCOFは初期に最大値を示した後に低下し約0.38に近づくのに対し, 陽極酸化材は徐々に増加し摩耗試験終了後は0.35~0.38を示し,fretting摩耗における酸化膜のCOFへの影響は摩耗初期に効果的であることが判る.一方,OCPは未処理材ならびに1, 5分陽極酸化材は摩耗開始と共にOCPが低下し終了と共に増加するが, 10, 30分陽極酸化材ではOCP変化は検出されない.摩耗試験開始時のOCPと摩耗試験中のOCPの差(ΔE)は陽極酸化時間の増加とともに減少し,10, 30分陽極酸化材ではほぼゼロに等しい.1,5,10分間陽極酸化材では基板が露出し,露出面積は陽極酸化時間とともに減少していることから, 摩耗試験中のΔEは基材の露出面積に支配され,トライボコロージョン特性は10分以上の陽極酸化材で優れていると結論できる.
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