研究課題/領域番号 |
20H02461
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
渡邊 千尋 金沢大学, 機械工学系, 教授 (60345600)
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研究分担者 |
三浦 博己 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30219589)
青柳 吉輝 東北大学, 工学研究科, 准教授 (70433737)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 銅合金 / ヘテロナノ組織 / 変形双晶 / 単純強圧延 |
研究実績の概要 |
市販のCu-Zn系合金,Cu-Ni-Si系(コルソン)合金を用い,冷間圧延加工を様々な加工条件の下で,最大90%まで行った.圧延後の両合金の微視組織を,光学顕微鏡,走査型電視顕微鏡,透過型電視顕微鏡を用いて観察を行い,組織学的因子(ヘテロナノ組織を形成する変形双晶,せん断帯,ラメラ組織中の結晶粒径・結晶方位分布,各組織の体積率比等を定量化した. コルソン合金に強圧延を施すことでヘテロナノ組織が形成し,極めて高い力学特性を達成した.さらなる強度向上を目的として,一部NiのCo置換を行った. Co置換によって,ヘテロナノ組織形成は促進された.しかし,ヘテロナノ組織形成後の時効硬化による強度向上は,Co置換を行わなかった場合とほとんど変化はなかった.これは,時効温度が比較的低いこと,さらにCo置換量が少なく強化相δ相の固溶限低下が限定的であったためと明らかになった. 昨年度,Cu-Zn系合金に圧延初期に2方向圧延(圧延面を90度回転)を施すこと,ヘテロナノ組織中の変形双晶ドメインの体積分率が増加し,その結果として強度が上昇する事を明らかにした.初期粗大結晶粒中で変形双晶形成に有利な結晶方位と,不利な方位が存在する.初期圧延方向で双晶形成に不利な結晶粒でも,圧延方向を回転することで,双晶が形成する事を示した.すなわち,初期粗大結晶粒中の変形双晶形成頻度が増加し,最終的な双晶ドメインの体積分率が増加する事を示した.さらに,圧延方向が<001>の場合,最も双晶形成に有利であり,<111>の場合が不利な事を実験的に明らかにした.この結果を基に,圧延前の初期集合組織がヘテロナノ組織に強く影響する事を示した.すなわち,圧延面に<001>方位集積をもつ試料が,他の集合組織を保つ試料よりも圧延後の強度が高いことを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
銅合金へのヘテロナノ組織導入によって,特性向上を達成した.さらに,作製加工プロセスや加工前の初期組織がヘテロナノ組織形成に強く影響する事を見いだし,これらを改善することで最終的な特性を向上可能なことを示した.以上のように,本研究の目的達成に向かって概ね順調に進捗している.
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今後の研究の推進方策 |
さらなる作製加工プロセスの改善と,ヘテロナノ組織形成に重要な組織因子の特定を行う.実験的に得られた因子をシミュレーションに導入し,現象の再現とその背景の学理を探っていく.
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