研究実績の概要 |
Al-Zn-Mg-Cu-Ni5元系改良合金設計に資する本5元系の熱力学データベースの構築を実施した.実験的には,T-Al6Mg11Zn11相強化型であるAl-5Mg-3.5Zn (at.%) を基本組成とし,4Ni,3Ni-1Cu, 2Ni-2Cu, 3Ni-1Cu, 4Cuと添加した5元系合金を,高周波溶解炉を用いて作製した。それらの合金に,溶体化処理温度に対応する480℃において240時間保持を行い,それらの構成相(平衡相)の同定を行った。また,構成相のEDSを用いた元素分析を行い,各相におけるCu及びNi元素の分配係数を求めた。これらの溶体化処理材に時効処理温度に対応する300℃において長時間保持を行い,300℃における平衡相の同定も行った。以上の実験結果を基にα-Al母相とT相の2相域及びAl3(Cu,Ni)2相を含む相領域を再現するように,T相や他の構成相の熱力学パラメータを調整した。実験的に同定したAl-Zn-Mg-Cu-Ni5元系の相領域を再現した熱力学データベースを用いて,状態図計算を行い,Al-3.5Zn-5Mg-2Cu-2Ni(at%)5元系改良合金を設計した.改良設計した5元系合金を実際に作製し,その200℃及び300℃の時効析出挙動を調べた.本改良設計合金は,200℃/105MPaの条件にて,基本合金の10倍以上のクリープ破断寿命を示すことを明らかにした。また,改良設計合金の強度と変形機構の解明を試みる「SEM内その場観察引張試験機」を導入し,本試験機を用いた実験方法を確立した。
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