研究実績の概要 |
当該年度では、昨年度設計したAl-5Mg-3.5Zn-2Cu-2Ni(at%)合金とそれにTiを微量添加した合金(Al-5Mg-3.5Zn-2Cu-2Ni-0.1Ti)のインゴットを溶製した。溶製試料は480℃/24 hの溶体化処理を施した後、200 ℃と300 ℃の温度にて、0.1 h~1000 hの異なる時間で時効処理を施した。また、これらの合金の試験片を作製し,室温から300℃までの異なる温度で引張試験を実施した。また、200℃/105MPaにてクリープ試験を実施した。 5元系合金とそれに0.1%Ti添加した合金の200℃と300℃の時効を施した結果、両合金とも、T相が粒界に析出し、その後粗大化することが観察された。また、塊状のAl3(Cu,Ni)2相も粒界に生成する。200 と300 ℃にて1000h時効を施した5元系合金(Ti無添加)において、粒界に無析出帯が認められるが、T相は比較的均一に析出する。一方、Ti添加合金では微細な析出形態の領域と比較的粗大な析出物が生成する領域が観察され、その傾向は両時効温度で認められた。特に、微細な析出形態の領域は母相中のデンドライト形状(凝固組織形態)を反映する。組成分析の結果、固溶Tiは析出相の粗大化を抑制することがわかった。 Ti添加合金は、5元系合金と同等の高温強度を示し,200℃にて優れたクリープ破断寿命を示す(105MPaのクリープ破断時間は、Ti添加により665hから916hに向上した)。このクリープ特性の向上は、固溶TiによるT相の微細な析出形態に起因することを明らかにした。
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