研究課題/領域番号 |
20H02464
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安田 弘行 大阪大学, 工学研究科, 教授 (60294021)
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研究分担者 |
趙 研 大阪大学, 工学研究科, 講師 (00633661)
永瀬 丈嗣 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 准教授 (50362661)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 構造・機能材料 / 社会基盤構造材料 / ハイエントロピー合金 / 転位 / 格子欠陥 |
研究実績の概要 |
AlxCoCr1+yFeMnNi1-yハイエントロピー合金を適切な温度で熱処理すると、粒界を核生成サイトとしてNiAl相とシグマ相の2相が析出する。とりわけ、室温で冷間圧延したのち、800~1000℃で再結晶熱処理を施すと、粒界ならびに変形中に導入されたせん断帯から上記2相が高速で析出して、平均粒径が0.5μm程度の超微細粒組織が形成される。令和2年度は、ハイエントロピー合金における上記2相の連鎖反応的高速析出挙動を解明した。具体的には、溶体化した試料を様々な温度で熱処理を施し、各相の等温変態曲線を作成することで、析出挙動を評価した。その結果、ノーズ温度付近(900℃付近)では、2相は同程度の析出速度であることが確認された。ノーズ温度付近では、10秒以下の時間で析出が開始することから、高速析出した析出物が粒界をピン止めすることで、平均粒径が1μm以下の超微細粒が形成されることがわかった。とりわけ800℃では、両相あわせて40%程度の析出物が粒界をピン止めしていることが確認された。なお、各相の化学組成をEDSで評価したところ、NiAl相はNi, Al-rich、シグマ相はCr-richであることが確認されている。一方、1000℃では、析出物の体積率は20%程度であり、これに伴い、平均粒径も増加した。また、700℃以下の低温側では、シグマ相、NiAl相の順に連鎖反応的に析出していることが確認された。こうして連鎖反応的に析出した場合、2相は隣接して存在している様子が観察され、組成によっては、シグマ相の内部からNiAl相が析出しているケースも観察された。その原因は、シグマ相に必要ないNiとAlが吐き出されることで、シグマ相周辺あるいは内部からのNiAl相の形成が促進されたためと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、AlxCoCrFeMnNi合金について、NiAl相とシグマ相の連鎖反応的析出の挙動を解明するとともに、それを利用して、超微細粒化に成功している。具体的には、析出物のサイズ、分布等を評価するとともに、両析出物のTTT線図を完成させている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、化学組成やプロセス条件を最適化することで、結晶粒の更なる微細化を達成するとともに、得られた合金の変形挙動を解明する。最終的には、析出物を2種類有するハイエントロピー合金で、高レベルの強度-延性バランスを実現する。
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