研究課題/領域番号 |
20H02473
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
野村 直之 東北大学, 工学研究科, 教授 (90332519)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 積層造形用ステンレス鋼粉末 / 粉末リサイクル / レーザ吸収 / 酸化物分散 |
研究実績の概要 |
本研究では、酸素が及ぼすステンレス鋼粉末特性、溶融挙動、造形性、造形体の力学特性への影響を学術的かつ系統的に明らかにすることを目的とする。積層造形用粉末機能、粉末リサイクル性、造形性、力学的性質を重畳して向上することを目指し、積層造形技術の基盤となる学術の発展に貢献する。令和2年度は、ステンレス鋼への添加元素としてZrに着目し、ガスアトマイズ法による粉末化とその粉末特性評価を行った。粉末へのZr添加量は公称で0.2%と0.5%とし、Zrを含有しない粉末と比較を行った。ガスアトマイズ法により粉末を作製した結果、それぞれの球形粉末を得ることが出来た。表面には典型的なサテライト粉末の存在が見られたが、添加量に伴う形状の変化は見られなかった。Zr量が増大すると粒径が小さくなる傾向が見られた。X線回折による結晶構造の同定を行った結果、面心立方構造を有するγ相と体心立方構造を有するδ相もしくはα相から構成されていた。ガスアトマイズプロセスにおいては、粉末は金属融液に高圧ガスを吹き付けることで小さな液滴となり、同時に急速に冷却され固相の微粒子となる。したがって、γ相より高温相であるδ相が残留したか、γ相状態からの冷却過程でα相が析出したのか検討が必要である。回転ドラム式崩落角測定装置を用いて、それぞれの粉末の崩落角を測定した結果、Zr量が増大すると崩落角が上昇する傾向が見られた。このことは、流動性の低下を示唆するものであるが、粉末床溶融結合法に供することが出来るかどうかについては別途実験が必要である。透過型電子顕微鏡を用いて粉末の断面観察を行った結果、0.5%Zrにおいて表面近傍にZrと酸素の濃化が見られたが、0.2Zrでは明瞭な濃化は確認できなかった。しかしながら、表面近傍におけるZrの濃化は粉末間の相互作用に影響を与え、結果として流動性を低下させたものと推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記粉末特性を踏まえたうえで、令和3年1月までに、酸化被膜形成用ステンレス鋼粉末の設計、ガスアトマイズによる粉末製造、粉末の酸化処理条件の選定、酸化粉末の粉末特性評価を行い、令和3年3月までに、酸化粉末を用いた積層造形を行う予定であった。しかし、COVID-19感染拡大にともなう粉末納期の遅延から、酸化処理粉末による積層造形を行うための粉末が不足した。粉末製造に関わる研究予算を令和3年度に繰り越して、積層造形および組織観察ならびに機械的性質の評価を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
Zrを添加した粉末を用いて酸化処理を行い、粉末特性の評価を進めることで、酸化処理の影響をZr添加と併せて調査する。未酸化粉末および酸化粉末を用いてレーザ積層造形を行い、粉末の溶融挙動や造形、機械的性質に及ぼす酸素の影響について調べる予定である。
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