研究課題/領域番号 |
20H02474
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
佐藤 成男 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (40509056)
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研究分担者 |
鈴木 茂 東北大学, マイクロシステム融合研究開発センター, 教授 (40143028)
星川 晃範 茨城大学, フロンティア応用原子科学研究センター, 産学官連携准教授 (60391257)
永野 隆敏 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 講師 (70343621)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | パーメンジュール合金 / 集合組織 / 相変態 / 中性子回折 / 軟磁気特性 |
研究実績の概要 |
パーメンジュール(Fe-Co)合金の軟磁気特性、加工性向上と製造コスト削減を目指し、「結晶方位による表面エネルギーの違い」と「拡散誘起の相変態」を駆動力とした結晶方位制御プロセスを実現することを目的とする。パーメンジュール合金のCoを20~30%まで減量すると、透磁率は低下する。この問題を解決するには、板表面に透磁率に優れた{100}面を持つ結晶方位制御が不可欠となる。そこで、パーメンジュール合金にMn、炭素を微量添加し、脱Mn熱処理により表面エネルギーの低い{100}粒を板表層に核生成させ、続く脱炭熱処理においてオーステナイト(γ)→フェライト(α)変態を駆動力とした粒成長を表層の{100}粒から生じさせる。これらの熱処理に伴う拡散現象、相変態、集合組織形成過程を中性子回折より直接観察する。具体的な実施項目は次の2点である。 1.MnとCを含有した20~30%Coパーメンジュール合金の圧延板(板厚:0.3~0.5 mm)に対し、相変態誘起の{100}再結晶集合組織を形成させる。 2.真空中焼鈍と水素雰囲気下における脱炭焼鈍を行う。いずれの熱処理においても、Mnや炭素の脱離に伴うオーステナイト(γ)→フェライト(α)変態とそれに伴い、表面に{100}を持つ組織を形成させる。 R4年度は変態温度領域を予測するため、Thermo-Calcソフトウェアを用いて相平衡計算を行い、計算から予測される二相域温度にて熱処理を行った。その結果、表面に相変態誘起の{100}再結晶集合組織を形成させることに成功した。なお、熱処理の際の真空度、昇温温度、昇温保持時間が、表面再結晶粒形成、{100}集合組織形成に作用することを明らかにした。この結果から、結晶方位を制御した表面再結晶最適条件を最適化することを課題として定義した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R4年度はR3年度に引き続き、開発合金に対し、表面誘起再結晶の熱処理を試行し、その組織解析を行った。合金にはFe-25Co-1Mn-0.1CおよびFe-25Co-2Si-1Mn-0.1C(mass%)を利用した。 従来、表面からのMn脱離に伴うγ→α相変態を狙い、Fe-Mn-Co三元状態図をもとに1000~1100℃が適切な熱処理温度と推定し、表面再結晶を成功させてはいたが、{100}再結晶粒が形成できず、条件の最適化が課題となった。また、表面下層の結晶粒がランダム方位にて粗大化する現象が確認された。熱処理温度として、Fe-Mn-Co三元状態図を基にした二相域を想定していたが、実際の二相域温度は異なると結論づけた。特に、利用した状態図は、炭素の影響を考慮しておらず、その影響を考慮するためThermo-Calcを利用した状態図計算を行った。その結果、適切な熱処理温度が920-950℃であることを明らかとした。この温度領域は比較的狭く、かつ、従来予想していた温度より100℃程度低いことが示された。 また、熱処理に伴う表面酸化の影響も懸念されたため、真空度の改善を行った。熱処理温度と真空度の検討、熱処理環境の改善により表面再結晶現象が安定して実現した。一方、結晶方位が期待する{100}粒として形成されず、その問題が昇温速度、昇温保持時間に影響よることを明らかにした。昇温速度、昇温保持時間をある程度最適化することで、{100}再結晶粒を得ることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は次のプロセスで実施する。 1.MnとCを含有した20~30%Coパーメンジュール合金の圧延板(板厚:0.3~0.5 mm)に対し、相変態誘起の{100}再結晶集合組織を形成させる。 2.真空中焼鈍と水素雰囲気下における脱炭焼鈍を行う。いずれの熱処理においても、Mnや炭素の脱離に伴うオーステナイト(γ)→フェライト(α)変態とそれに伴い、表面に{100}を持つ組織を形成させる。 R4年度は変態温度領域を予測するため、Thermo-Calcソフトウェアを用いて相平衡計算を行い、計算から予測される二相域温度にて熱処理を行った。その結果、表面に相変態誘起の{100}再結晶集合組織を形成させることに成功した。以上の成果に基づき、R5年度は以下の内容を実施する。 相変態温度を計算から予測し、表面再結晶組織を得ることに成功した。ただし、計算では相変態温度が曖昧な点があり、実際に二相域温度と想定しない温度でも再結晶集合組織が得られるケースもあった。このため、計算と実際の相変態温度にはズレがあると考えられ、最適な温度域は見つけるに至っていない。そこで、高温のその場中性子回折により相変態温度と二相域における相分率評価を行う。その結果に基づき、最適な表面再結晶温度を決定する。得られた組織はSEM-EBSD観察により評価する。熱処理温度は900℃から1000℃の範囲で熱処理を行い、表面再結晶挙動を調査する。なお、Co, Mn, Siの拡散は走査電子顕微鏡(SEM)のエネルギー分散型X線分析(EDX)による元素分析から評価する。 次のステップとして板表面~内部の変態誘起再結晶にトライする。変態は水蒸気-水素雰囲気による脱炭素により行う。また、磁気組織の観察をカー効果顕微鏡にて観察する。
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