今年度は「2次生成したベイナイトの3次元組織」について検討した。特に下部ベイナイトについて,その2次生成した組織を3次元的に評価した。使用した鋼は0.6wt%C-1.5wt%Si-1.75wt%Mnを含む組成であり,1000℃600s保持することでオーステナイト化した後,350℃まで急冷し保持することで5~15%程度ベイナイト変態させた試料を評価した。2次生成したベイナイトは主に1次生成したベイナイトのエッジ部から生成するものと板面から生成するものに分かれており,それぞれ選択されるバリアントが異なることが分かった。1次生成したベイナイトのエッジ部から生成したベイナイトのバリアント選択について弾性相互作用エネルギー,弾性ひずみエネルギーおよびKC条件に基づいて検討した結果,いずれの観点からも実験的に観察されたバリアントの生成が有利であることを示した。一方,1次生成したベイナイトの板面から生成したバリアントは,弾性ひずみエネルギーや弾性相互作用の観点ではバリアント選択の優位性について説明することはできず,オーステナイトの塑性変形やバリアント間の界面エネルギーなどの影響を考慮する必要があると考えられる。 また,「マルテンサイト変態の変態初期組織の3次元解析」を行い,マルテンサイトの初期の生成挙動について検討した。用いた鋼は0.15wt%C-14wt%Niを含む組成であり,1000℃に加熱しオーステナイト粒の大きさを制御した後に急冷し,変態率が5%程度の温度で再加熱し,焼き戻し処理を行った後に室温まで急冷した。この熱処理により変態初期に生成したマルテンサイトを焼き戻しマルテンサイトとし,残りを焼入れままマルテンサイトとすることで3次元観察を行いやすくした。変態初期に生成するマルテンサイトはベイナイトと異なり,粒界のエッジに沿うバリアントが生成しやすいことを明らかにした。
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