研究課題/領域番号 |
20H02476
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
山中 晃徳 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50542198)
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研究分担者 |
渡邊 育夢 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主幹研究員 (20535992)
箱山 智之 岐阜大学, 工学部, 助教 (20799720)
桑原 利彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 卓越教授 (60195609)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 板材成形 / 材料モデリング / 機械学習 / データ同化 / 最適化 / フェーズフィールド法 |
研究実績の概要 |
本研究は, 有限要素法に基づく金属板材のプレス加工シミュレーションとデータ科学的方法(深層学習・データ同化・ベイズ最適化)を駆使して, 金属板材の内部組織情報から強度や成形加工性を予測するのみならず, その逆予測やプレス加工条件等の最適化を可能とする数値計算技術を開発することを目的としている. 2021年度は, 主に以下の2項目の研究を遂行し, 学術論文2篇および学会発表4件の研究成果を得た. (1)深層学習によるアルミニウム合金板の二軸応力-ひずみ曲線予測の高度化 2020年度の研究で開発した, 深層学習によるアルミニウム合金板の二軸応力-ひずみ曲線の推定技術(DNN-NMT)をさらに高度化するためには, 深層学習のために使用する訓練データに数値計算結果だけでなく実験結果も含め, データベースを充実する必要があることを明らかとした. そこで2021年度の研究では, 非線形応力状態も含めた様々な応力状態での二軸引張試験機を新規に設計, 開発, 製作した. (2)ベイズ最適化による材料組織最適化手法の開発 DNN-NMTを用いることで, アルミニウム合金板の内部組織情報から力学特性を推定可能となったため, 2021年度はその逆, すなわちアルミニウム合金板に所望の力学特性を発現させるための内部組織を最適設計する数値計算手法(BayesTexOpt)を開発した. BayesTexOptでは, DNN-NMTとベイズ最適化を組み合わせて用いる. 開発手法の適用可能性を検証するために, アルミニウム合金板に所望の塑性異方性を付与するための内部組織を最適設計を行い, 目的通りの最適設計が可能であることを実証した. この成果は, 国際共著論文(R. Kamijyo et al., Int. J. Mech. Sci., 23 (2022), 107285)として発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の本研究の目的に対して, 必要となる数値計算技術は, おおむね計画通りに開発してきた. 研究成果は, 関連分野での学会発表や論文発表にとどまることなく, オープンソースやアプリケーションとして, 一般に利用可能な形で公開することも計画してきた. 2021年度においては, 上記のDNN-NMTと BayesTexOptを, ソフトウェアの開発プラットフォームであるGitHubにて公開した(https://github.com/Yamanaka-Lab-TUAT). 両ソフトウェアともに, 一定数のアクセスを得ている. さらに, 本研究の成果は, 日本塑性加工学会誌「ぷらすとす」で解説論文として報告した.
本研究では, フェーズフィールド法とデータ同化による静的再結晶組織予測のための数値計算技術の開発も計画している. これに対しては, 企業との共同研究を通じて, 実験データを得ており, 2020年度の研究で開発したアンサンブルカルマンフィルタを用いたデータ同化を実施中である. この研究成果は, 2022年度内に国内学会および国際会議において発表を計画している.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は全体として当初計画に沿って進行している. 2022年度は, 下記の方針で研究を推進し, 未解決の課題と2年間の研究で見えてきた新たな課題に取り組む. (1)フェーズフィールド法とデータ同化による静的再結晶組織予測技術の開発:アルミニウム合金板の強度や加工特性を支配する因子である集合組織形成を理解し, それを数値シミュレーションで予測するために, 企業から提供される実験データを用いて, データ同化を行う. アンサンブルカルマンフィルタを用いて, 静的再結晶組織予測に必要な界面エネルギーや界面モビリティーを推定する技術を開発する. これにより, フェーズフィールド法による静的再結晶組織予測の精度向上を狙う. (2)データ同化による材料モデルの同定手法:デジタル画像相関(DIC)法によるひずみ計測技術とデータ同化を用いて, 実験データから直接材料モデルを同定する技術を2021年度に引き続き開発する. 2021年度の研究において既に, 一定の成果を得ており, 2022年度内に日本塑性加工学会と国際会議において発表予定である. しかしながら, 材料モデルの同定精度に改善の余地があり, 2022年度の研究により独自技術として完成する. (3)多目的ベイズ最適化による材料組織最適化手法の開発: 2021年度にBayesTexOptを開発し, アルミニウム合金板に所望の力学特性を発現させるための内部組織を最適設計する技術を構築した. しかし, 金属板材の力学特性は, しばしばトレードオフの関係(例えば強度を増加させると, 加工性は低下する)があり, このトレードオフを考慮して金属板材の内部組織を最適設計手法が必要である. 2022年度は多目的ベイズ最適化を用いて, BayesTexOptを改良する. これは, 本研究を推進する中で着想した新たな研究課題である. 上記で得られた研究成果は, 日本塑性加工学会等の国内学会や国際会議で発表する. また, (2)と(3)については, 2021年度に引き続き国際共同研究を行う.
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