研究課題/領域番号 |
20H02477
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
伊藤 暁彦 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (20451635)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 化学気相析出 / 自己組織化 / セラミックス / 耐環境コーティング / ナノ構造制御 |
研究実績の概要 |
エンジニアリングセラミックス部材がより過酷な環境において優れた信頼性を発揮するためには、部材を保護するセラミックスコーティングにおいても組織設計の変革が求められている。本研究課題では、気相中での自己組織化に基づく新たな設計手法を提案する。セラミックスコーティング内部にナノ構造を作りこむ手法は、従来の組織設計や構造設計を実現するためのコーティングプロセスでは達成しえない組織形成手法である。化学気相析出法を用いた芯材強化柱状構造の自己組織化析出を実証し、その熱的・機械的特性を評価する。 2020年度は、まずはHfO2およびSrHfO3膜の単相膜を対象として実験に着手した。原料には、Sr、Hfの有機金属化合物を用い、原料炉内で所定の温度で気化させ前駆体ガスとした。基板には、セラミックス基板や各種酸化物の単結晶基板を用い、加熱ステージ上でレーザー照射により加熱した。合成した試料は、X線回折により相同定を行い、微細組織は走査型電子顕微鏡により観察した。蛍光特性は、蛍光分光光度計により測定し、機械的特性はマイクロカンチレバー法により評価した。 2020年度は、まずSr有機金属化合物原料の選定を行った。我々の研究グループでは、これまでSrの有機金属原料としてStrontium bis(dipivaloylmethanate) (Sr(dpm)2) を用いてチタン酸ストロンチウム (SrTiO3) やM型ヘキサフェライト (SrM) 磁性結晶等の合成を行ってきたが、本研究ではより高い蒸気圧と反応性を有する Strontium bis(hexafluoroacetylacetonate) (Sr(hfa)2) に着目し、両原料を用いた比較実験を通じて、Sr(hfa)2原料を用いたSrHfO3のCVD合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、Sr有機金属化合物原料の選定を行い、原料濃度、成膜温度、成膜炉内圧力を変化させながらHfO2およびSrHfO3膜を合成し、生成相と微細組織の関係性をマッピングし、単相膜の合成条件を明らかにできた。また、HfO2膜およびSrHfO3膜の柱状晶を合成し、マイクロカンチレバー法を用いた機械的特性の評価にも着手できた。さらに発展的な研究トピックとして、HfO2膜およびSrHfO3膜の光学特性を調べることができた。以上より、本研究課題はおおむね順調に進展しているものである。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、HfO2-SrHfO3共晶系のコンポジット膜の合成に着手する。。HfO2-SrO系は、25 mol%SrO (2713 K) に共晶点を持つ。共晶体セラミックスでは、構成相が互いに組織化して共晶組織を形成し、組成や成長条件によって様々な組織を呈する。溶解凝固法においては、共晶組成近傍では、層状やロッド組織が成長し、その前後の組成では、樹枝状組織が生成することが知られており、気相から自己組織化した芯材構造の形態も同様の傾向を示すことが予想される。一連の合成・評価実験を通じて、成膜温度やSr/Hf仕込み組成が、構成相や共晶組織、特に機械的特性や光学特性に与える影響を明らかにする。
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