研究課題/領域番号 |
20H02478
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
會田 英雄 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (10811648)
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研究分担者 |
木村 豊 青山学院大学, 理工学部, 助教 (40838851)
澤邊 厚仁 青山学院大学, 理工学部, 教授 (70187300)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / ヘテロエピタキシャル成長 / CVD法 / 欠陥密度 |
研究実績の概要 |
温室効果ガス削減に極めて大きな貢献が期待されるダイヤモンドによる究極の省エネルギーパワー半導体デバイスの実現には、高品質かつ大型のダイヤモンド基板実現が必須である。本研究では、ヘテロエピタキシャル成長法により基板の大型化と結晶欠陥密度低減を目指す。今年度は昨年度に目途を立てたMgO下地基板の下地処理技術をさらに向上させる取り組みを行った。すなわち、ダイヤモンド成長用下地MgO基板の完璧表面創成を目指し、研削、研磨、洗浄、熱処理からなるMgO基板表面創成プロセスを確立するとともに、MgO内部不純物であるCaの析出プロセスを明らかとした。Caは熱処理プロセスで表面に析出する。その析出過程を明らかとできたことから、抑制することのできる基板前処理プロセスが完成した。 次に、MgO基板に対する超精密オフ角度制御技術も確立し、MgO基板表面処理プロセスと融合することで、様々な微小角度を持った原子ステップテラス構造MgO表面を得た。、その基礎的なプロセスデータの取得に成功した。こうして得られた下地MgO基板上へのイリジウム薄膜成長を実施して、Ir薄膜成長に対するMgO表面の微小オフ角度適用の効果を検討した。オフ角度の最適地を見出すまでには至っていないが、MgO結晶品質に対し下地MgO基板の原子ステップテラス構造適用の明らかな有効性を見出すことができた。また、成膜装置に各種の改良を施した。ダイヤモンド成膜プロセスでの温度変化がもたらす欠陥発生の抑制や、成膜状態のその場観察技術を整えることで、本格的な欠陥低減プロセス開発に取り掛かる準備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は4年間の研究課題として計画し、『下地基板アプローチ』と『成膜プロセスアプローチ』をパラレルに前半2年で研究開発しつつ、後半2年間にはこれらの検討を融合する計画で推進している。下地基板のアプローチでは、主要な研究課題の一つであるMgO基板の原子平坦化加工プロセスについては、原子平坦化表面創成に関わる加工プロセスおよび加工後の洗浄プロセス、さらに熱処理プロセスまでの一連の加工・基板前処理プロセスを完成し、さらにMgOに含有される不純物Caの析出メカニズムの解明とそれに基づく表面析出抑制手法も確立できた。 もう一つの課題である成長テクニックの開発では、ダイヤモンド核発生と薄膜成長プロセスの2つのプロセス間での温度変化がもたらす影響を最小限にする取り組みに着手した。2工程のための2つのプロセス装置を融合することで、シームレスな工程を可能とし、欠陥発生を低減できる成膜装置が完成した。 以上の研究成果が得られていることから、おおむね順調に研究計画が進行しており、次年度の研究計画も計画通り推進できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにパラレルに取り組んできた2つのアプローチ、すなわち『下地基板アプローチ』と『成膜プロセスアプローチ』を融合していく取り組みを開始する。 完成した下地結晶基板の原子オーダー無じょう乱表面かつ原子ステップテラス構造を有するMgO基板の作成法を適用して、様々なオフ角度を有するMgO基板を準備し、下地基板上へIr成膜、ダイヤモンドの初期核形成、およびコアレセンス様式制御の基礎検討を実施する。昨年度までに大幅な改良を施したCVDダイヤモンド成膜装置を用いて、核形成プロセスのリアルタイム観察を行いながらコアレセンス様式がダイヤモンド品質に及ぼす影響を調査する。成長初期における核形成とその拡大状態を核発生密度、核成長レート、コアレセンス形態に関する基礎的な相関関係を明かにしていく。 また、初期成長以外にもダイヤモンド膜厚と基板反り形状との関係性を実験的かつ理論的に明らかにしつつ、その低減方法を検討する。このような初期成膜条件と成膜後に発生する欠陥の低減手法を考案していくことで、欠陥密度の大幅な低減に向けた基礎アプローチを固め、基礎的な成膜プロセスの確立を行う。また、最終段階では横方向成長などの成長テクニックの適用を検討していることから、その基礎となるパターン成長のためのパターン形状条件出しに着手する。
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