研究課題
2020年度の実施内容と得られた成果を以下に示す.(1)フェライト単相鋼および純アルミニウムを対象とした粗大結晶粒試験片の作製を行った.フェライト単相鋼では,種々の条件で結晶粒の粗大化を試みたものの全ての結晶粒の粒径を0.5mm以上まで粗大化させるには至らなかった.実験では板厚0.5mm以上の試験片を用いる予定であることから,このことは板厚方向に全ての結晶粒が貫通した試験片の作製が困難であることを示す.一方,純アルミニウムでは平均粒径1mmを超える材料を手配することができ,板厚方向に結晶粒が貫通した試験片を作製することができた.また粒径が大きいことから,ゲージ部に含まれる結晶粒数の調整も比較的容易である.そこで今後の研究では,純アルミニウムを主に使用することとする.(2)粗大結晶粒フェライト単相鋼を用いて,種々の変形モードにおける結晶粒レベルでの微視的変形特性を調査した.その結果,ひずみ分布の不均一性は変形初期から発現すること,変形モードによってひずみ帯の発生形態が大きく異なること,ひずみ帯の発生はシュミット因子から概ね説明可能なことなどが明らかとなった.この知見は今後の最適化の検証に活かされる.(3)データ同化技術の結晶塑性有限要素法解析プログラムへの実装を行った.計算効率や解析精度,これまでの実績など多方面から詳細に検討した結果,研究分担者がこれまで開発してきたアンサンブルカルマンフィルタに基づくデータ同化技術を用いることが当面は最適と判断した.そこで,これまで研究代表者らが開発してきた結晶塑性有限要素法解析プログラムへ本データ同化技術を実装した.また,結晶塑性解析側とデータ同化側で最適化すべきパラメータの共有を可能とするインターフェースを整備した.これにより,次年度以降のデータ同化を用いた本格的な検討に向けて準備が完了した.
2: おおむね順調に進展している
当初の予定どおり,粗大結晶粒材の手配や数値解析との比較に適した素材の選定,データ同化技術の結晶塑性有限要素法解析プログラムへの実装を実施することができたため,概ね順調に進展していると判断した.
これまで計画通りに研究が進展しているため,2021年度も当初の予定通り実施する所存である.具体的には,2020年度に選定した素材を用いた実験および解析の実施や,データ同化技術を実装した結晶塑性有限要素法解析プログラムによる解析パラメータの最適化などを試みる計画である.
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