研究課題/領域番号 |
20H02481
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
江利口 浩二 京都大学, 工学研究科, 教授 (70419448)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 窒化ホウ素 / プラズマ / フラックス / エネルギー / 電気特性 / 光学特性 |
研究実績の概要 |
窒化ホウ素膜(BN)は化学安定で様々な極限環境や電子デバイスへの応用が期待されている唯一の材料であるが,実用に耐えうる2D,3D構造の制御技術は未だ確立されていない.本研究では反応性プラズマ成膜(RePAC)法を用い,安定したBN膜の構造制御・機能設計手法の実現を目指した.以下に研究実績の概要を示す. (1)既存のRePACシステムにおいて,イオンエネルギーとイオン・ホウ素フラックスを独立に制御し,単結晶シリコン基板上へsp2-sp3結合混相系BN膜を作製した.界面密着性,機械特性に着目し,プロセスパラメータとFT-IRより得られるsp2-sp3結合比のマッピングを完成させた. (2)種々のプロセス条件で作製したBN膜の粘弾性率(硬度)変化をナノインデンテーション法で,また誘電率変化を水銀プローバーを用いた微分電気容量法で解析した.その結果,これら物性パラメータがsp2-sp3結合比に大きく依存することを明らかにした.機械特性については,ナノインデンテーション硬さと膜厚・sp2-sp3結合比のマッピングを完成させた.また,マイクロスケールのデバイスを用いたsp3系BN膜の剥離機構解析手法を提案した.さらに,光学特性解析に必須のエリプソ分光法での光学モデル(Tauc-Lorentz型)を確立した.その結果,消衰係数がsp2-sp3結合比に大きく依存することを明らかにした. (3)BN膜組成の制御性ならびにプロセス安定性・スループットの向上を目指し,分離型アーク放電プラズマ(2G-RePAC)の改造に着手した.ホウ素蒸発源からの水素の発生を抑制しながらスループット向上の実現を目的とした蒸発室チャンバーを作製した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍によるチャンバー改造遅延が発生した一方で,既存のプロセスによるBN膜の解析が想定以上に進展し,多くの研究成果に結実したと考える.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,改良型アーク放電型高密度プラズマ源を完成させる.また,既存のプラズマ源で運用しているh-BN/c-BN組成比をデザインできる成膜プロセス法の実装を進める.Si基板,SiO2/Siなど様々な母材上に,sp2-sp3結合比を変化させたBN膜を形成する.これら構造に対して,以下の課題を明らかにする. (1)プラズマパラメータとsp2-sp3結合比に物性値を含めたマッピングを完成させる. (2)BN膜の光学特性とトンネルリーク電流特性との相関を,sp2-sp3結合比を指標に明らかにする. (3)(2)を鑑み,母材の違いによる剥離機構やBN膜の経時的物性変化(トンネルリーク電流特性変動,機械特性変動)を評価解析し,今後のBN成膜の設計指針となる基盤データベースを構築する. (4)BN作製した構造から,ナノテクノロジープロセスにより,種々の微小デバイス構造を作製する.多数のデバイス解析を通して,統計的指標による(3)の解析を進める.
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