研究課題/領域番号 |
20H02482
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三浦 清貴 京都大学, 工学研究科, 教授 (60418762)
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研究分担者 |
清水 雅弘 京都大学, 工学研究科, 助教 (60704757)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | レーザー / ガラス |
研究実績の概要 |
衝撃波の干渉効果を利用して特定方向の転位やクラックの形成など、異方的な構造変化を制御するために、偏光顕微鏡とPump-probe法を組み合わせた。具体的にはプローブ光として円偏光を用い、λ/4 波長板と偏光子の条件を変化させたときの透過光強度を解析することで、ピコからナノ秒スケールでの応力変化が観測可能な過渡応力観測システムを確立した。さらに、弾性力学シミュレーションによる応力分布の理論的解析およびPump-Probe法と偏光解析法に基づき、レーザー照射後の結晶内部での過渡応力分布の可視化を行い過渡応力観測システムにより得られた応力変化のダイナミクスが提案する弾性力学シミュレーションにより再現できることを確認した。 本シミュレーションでは、単結晶内部にレーザー照射後、集光点での急激な温度上昇と材料特性の変化によって応力が発生し、温度上昇領域の原子が発生した応力によって変位することで応力緩和が起こると仮定し、弾性力学に基づいて結晶格子の変位の時間変化をシミュレーションした。応力波の伝搬過程(過渡応力分布)をMgOとLiF単結晶について調べた結果、二種類の応力波の伝搬が確認され、シミュレーションと弾性力学によって算出される伝播速度から、第一応力波は主に伝播方向と変位方向が平行である縦波成分から成り、第二応力波は伝播方向と変位方向が垂直である横波成分から成ることが確認でき、これらの伝搬過程で生じる応力派の干渉により、圧縮、ねじれや引張応力により本来結晶が持つ原子配列に依存した転移やクラックが形成されることを明らかにした。また、多点同時照射では照射点分布に依存してクラックや転移の長さが異方的に変化し、この原因が同時に発生する応力波同士の干渉に起因すること、同時照射する照射点の位置関係と結晶の原子配列とを考慮することで構造変化の制御が可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レーザー照射により発生する過渡応力(衝撃波)の伝搬過程を観測するために、ピコ~ナノ秒スケールでの応力変化が観測可能な過渡応力観測システムを構築した。同時に単結晶内部にレーザー照射後、集光点での急激な温度上昇と材料特性の変化によって応力が発生し、温度上昇領域の原子が発生した応力によって変位することで応力緩和が起こると仮定し、弾性力学に基づいて結晶格子の変位の時間変化をシミュレーションすることで、実験結果が再現できることも確認している。 さらに、レーザー照射後の結晶内部での過渡応力分布の可視化を行い、理論と実験の両面から結晶構造に依存する種々な応力波の緩衝効果の比較・検証も行っており、当該年度の目標を達成しているため。
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今後の研究の推進方策 |
レーザーパルスエネルギーの変調による連続加工との組み合わせ 実験的に確認しているパルスエネルギー変調による透明材料内部の均一加工効果のメカニズムを明らかにするため、高速度カメラを用いた励起領域(例えばプラズマ発光)の時間変化を観測する(三浦)。 さらに、FDTD法による電磁場解析を用いて光励起領域の時間変化をシミュレーションすることで、材料毎に異なる最適な変調波形やその周期あるいはパルス間隔の推定を可能とする解析手法の開発を行う(三浦)。最終的に、パルスレーザーの集光照射による透明材料内部加工において、制御された形状やサイズを有する特徴ある誘起構造を均一に線あるいは面で連続加工する技術としての可能性を見極める(三浦、清水)。
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