研究課題/領域番号 |
20H02483
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
服部 賢 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (00222216)
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研究分担者 |
服部 梓 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (80464238)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 原子平坦 / ファセット表面 / 側壁表面 / 三次元デバイス / ウェットプロセス / 走査電子顕微鏡 / 低速電子回折 / 磁性 |
研究実績の概要 |
当該年度(繰越期間含む)は、エッチング試料の作製、試料ホルダー系の作製、STM試料ホルダー受手機構の調整、STMコントローラの導入などを行った。Si(110)基板上の立体Si{111}ファセットライン構造、Si(001)基板上の立体Si{111}ファセット凸型(または凹型)ピラミッド構造を主な対象として、マスクレジスト材料、マスク形状、マスク寸法、ドライエッチングのガス種・分圧・時間、ウェットエッチングの液種・温度・時間など作製条件の調整を、走査電子顕微鏡(SEM)等を用いて行った。その結果、フォトリソグラフィーにおける10-15 μm寸法において、SEM評価からほぼ直線的なエッジ稜線をもち、ほぼ平坦なピラミッドファセット表面をもつ立体構造体の作製条件の最適化ができた。また、一部試料については、超真空フラッシュ加熱処理後の低速電子回折(LEED)等の観察において、{111}ファセット表面の7×7超構造の形成が確認された。これらの成果により、三次元側壁面原子平坦仕上げ加工法の基本過程の構築が成されたと言える。 また当該年度は上記に加えて以下の新たな進展があった。Si(001)基板上に形状制御した立体Si{111}ファセットピラミッド構造表面に成長させたFeナノ薄膜の磁性を、振動式磁力計(VSM)で評価したところ、磁気渦が立体ピラミッド先端に捕獲されると解釈できる特異な磁気ヒステリシスが得られた。磁気渦の立体形状に依存する捕獲は、立体構造を利用した新たなスピントロニクス工学に発展し得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、平坦基板平面の走査トンネル顕微鏡(STM)による評価後に、立体構造体の形状や表面の評価を予定していた。しかし、平坦基板平面のSTMによる評価は、SEM評価やLEED評価と比べSTM評価実験遂行自身の困難さに加え、コロナ禍の影響による実験参加者の活動時間の低下により、やや遅れていた。そこで、当該年度は、短時間でより大きな成果が得られる立体構造体のSEM・LEED評価に先行して行った。その結果、既述の立体形状・表面秩序に関する堅実な研究成果を得た。従って、評価の順番を入れ替えたものの、概ね順調に研究は進行していると言える。 また、既述の立体構造体上の磁性薄膜の特異磁性に関しては、当初の予定にはなかったが、表面制御した立体構造特有の物性展開に大きな波及効果が得られることから評価を試みたところ、立体構造に起因する新奇で重要な磁性を得ることができた。これは予想外の成果と位置付けられる。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の影響による実験参加者の活動時間の制限がある場合は、短時間でより大きな成果が得られる立体構造体のSEM・LEED評価を、立体構造体のタイプを変えて、引き続き遂行する。その後、活動量が上昇してきた時点で、表面局所構造に対する系統的なSTM評価に軸足を移す。そこでは、エッチング反応処理、加熱処理による立体表面制御に関する知見を得る。 また、付随して、将来の展開を見越して、作製した立体構造体の磁性薄膜の特異磁性に関する研究も進める。
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