研究課題/領域番号 |
20H02485
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
矢吹 彰広 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (70284164)
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研究分担者 |
吉岡 朋久 神戸大学, 先端膜工学研究センター, 教授 (50284162)
李 志河 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (90809584)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自己修復 / ナノファイバー / コーティング / 腐食 / 放出 / 防食 / 金属 |
研究実績の概要 |
本研究では,ナノファイバー含有自己修復性コーティングについてナノファイバーとポリマー界面におけるナノ空間の修復剤の物質移動に関して,吸水,脱着,溶解,拡散の解析による機構解明とその放出制御を目的として,3年間で計画されたものである。令和3年度は,研究計画調書にあげられている以下の2点を中心とした取り組みを行った。 1. 実験による修復剤の拡散放出挙動の解明 本年度は無機系修復剤の拡散放出挙動を実験的に求めた。ポリマーにはビスフェノール型エポキシ樹脂,無機系修復剤として亜硝酸ナトリウム,リン酸マグネシウム,ナノファイバーにはセルロースナノファイバーを用いた。これらを混合し,ナノファイバーおよび修復剤を添加したポリマーコーティングにおける拡散放出挙動について,紫外可視分光光度計による分析を行った。実験の結果,修復剤の放出挙動が変化することが分かった。
2. 数理計算的アプローチ(分子動力学法)による修復剤の拡散挙動の解明 ポリマーとナノファイバーに界面における修復剤の拡散の分子動力学シミュレーションにはMaterials Studioを用いた。ナノファイバーとポリマーの界面における場の最適化を行った後に有機修復剤であるオレイン酸ナトリウム,無機修復剤である亜硝酸ナトリウムを用いて,拡散挙動についてシミュレーションを行った。計算の結果,有機修復剤はナノファイバーおよびポリマーに吸着したが,無機修復剤は吸着なしに拡散放出されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験による修復剤の拡散放出挙動の測定およびポリマーとナノファイバーに界面における修復剤の拡散および放出の分子動力学シミュレーションを計画し,両者とも若干の計画の変更があったものの当初の目的に合致した実験,計算を行うことができ,新たな知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
エポキシ樹脂中でセルロースナノファイバーと修復剤の量を変化させて実験を行う。有機系修復剤としてオレイン酸ナトリウム,無機系修復剤として亜硝酸ナトリウム,リン酸マグネシウムを用いる。これらの実験により,修復剤の放出制御に関する情報を得た後に比較を行う。 セルロースナノファイバーに修復剤を担持させた後にポリマーに混合し,それを金属材料に塗布し,スクラッチ試験機で基材に達する欠陥を付与して,腐食液中で交流インピーダンス法を用いた電気化学測定を行い,腐食抵抗の経時変化をモニタリングする。この腐食抵抗が初期の値より上昇した場合に自己修復性があると判断し,効果の確認を行う。 数理計算的アプローチ(分子動力学法)による修復剤の拡散挙動についてはポリマー中の吸着量・濃度勾配を推進力とし,ポリマー中の拡散性に基づいた理想的な放出速度の推算を試み,相対的な放出速度の比較検討を行う。
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