研究課題/領域番号 |
20H02486
|
研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
鈴木 浩文 中部大学, 工学部, 教授 (20282098)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 超音波援用インデンテーション / アモルファス金属 / 無電解Ni-P / ダイヤモンド圧子 / テキスチャリング / 形状転写性 / 表面粗さ / バリ |
研究実績の概要 |
超音波援用インデンテーションの基礎的特性を把握するために,無電解Ni-P,無酸素銅,6-4黄銅を材料に対して,インデンテーション荷重,インデンテーション深さを変化させて特性を評価した.3種類の材料に対して,インデンテーション深さが10μm,40μmにおいて,超音波振動の振幅を変化させて時の荷重の変化させた.硬度の高い材料ほどインデンテーション荷重が大きく,振幅が大きいほど荷重が小さくなった.次に,インデンテーション荷重,インデンテーション深さを変化させて特性を評価し,超音波振動の振幅が大きいほど変形に必要な荷重が小さくなっていることがわかった.また,設定したインデンテーション深さに対する実際の加工深さの変化を評価した.いずれの超音波振動の振幅においても設定深さ通りの加工が行えた. さらに,90度の四角錐のインデンテータを用いて,圧子に対するインデンテーションの転写性を検討した.超音波振動の振幅が大きいほど転写性が優れていた.無電解Ni-Pは最も硬度が高いが,転写性は比較的良好であった.比較的硬度が低い黄銅が最も悪かった. 最後に,四角錐および球形状の無電解Ni-P製アレイ金型を圧子により超音波援用インデンテーションを行った.インデンテーション後にバリを除去するために平面切削を行った.四角錐の圧子を用いて加工したアレイ金型を試作し,このアレイ金型でアクリル樹脂に加圧圧縮成形した.同様に,球形状の圧子を用いて加工したアレイ金型を試作し,このアレイ金型でアクリル樹脂に加圧圧縮成形した.エッジ先端も転写され,良好に成形できていた. 以上のように,超音波振動を付加することによる無電解Ni-Pなどのアモルファス金属材料の高精度・高能率塑性変形特性を明らかにし,微細で構造的な超精密形状の創成の高精度・高能率加工を実現した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微細形状加工やテキスチャリングは従来,「切削加工」などの機械的除去加工で実施されているが,大きな課題が有る.本提案の「超音波振動援用ナノインデンテーションによる微細形状の高精度テキスチャリング」では,超音波振動を援用しながらインデンテーション(圧入)を行うため,小さな押込み圧力で金属やアモルファス材料の微細形状の高精度・高能率転写加工が実現可能である.単純な圧子による押込み加工で実現できない微細形状の高精度高能率加工が,(1) なぜ超音波を付加することにより低圧力で材料の塑性流動が生じるのか,(2) 高精度・高能率転写加工ができるのかを,塑性流動解析,実験的検証により明らかにすることを目的とする.昨年度まで,レーザ光走査装置の設計・試作,レーザ光による単結晶ダイヤモンドの加工特性の評価,超音波振動援用ナノインデンテーションシステムの設計・試作,弾塑性解析による転写性の解析などを計画通りに実施できた. 以上のように,超音波振動を付加することによる無電解Ni-Pなどのアモルファス金属材料の高精度・高能率塑性変形特性を明らかにし,微細で構造的な超精密形状の創成の高精度・高能率加工を実現した.
|
今後の研究の推進方策 |
本提案の「超音波振動援用ナノインデンテーションによる微細形状の高精度テキスチャリング」では,超音波振動を援用しながらインデンテーション(圧入)を行うため,小さな押込み圧力で金属やアモルファス材料の微細形状の高精度・高能率転写加工が実現可能である.単純な圧子による押込み加工で実現できない微細形状の高精度高能率加工が,(1) なぜ超音波を付加することにより低圧力で材料の塑性流動が生じるのか,(2) 高精度・高能率転写加工ができるのかを,塑性流動解析,実験的検証により明らかにすることを目的とするので,今後は以下について検討を行う. 次年度は,微細矩形形状のテキスチャリング型の試作を行い,提案法の効果を実証する.はじめに,テキスチャリング用の単結晶ダイヤモンド製インデンテータ(圧子)を試作する(レーザ加工).形状は矩形断面,溝幅5μm,深さ5μm,溝長さ500μm,溝数100本とする.テキスチャリングの実験を行い,解析結果と照合し,加工条件の最適化を行う.工作物は純Tiとする.そして微細矩形形状のテキスチャリングの評価を行う.歯科インプラント用の純Tiにナノインデンテーションによりテキスチャリングを実施し評価する.工作物は純Ti製インプラント(Φ4mm),振幅5μm,深さ5μm,溝長さ500μmとし,生体親和性を評価する. さらに,令和5年度はナノインデンテーソンによる表示パネル反射防止テキスチャの型加工と試作基板の評価を実施する.反射防止用テキスチャリング形状の設計を行い,レーザ加工により単結晶ダイヤモンドに微細なV溝形状のインデンターを試作する.インデンテーションテストを行い,無電解Ni-P基板にV溝形状を転写し,評価する.また,従来の無電解Ni切削面の加工精度(形状精度,表面粗さ,エッジの精度)を比較する.最後に光学特性(光の入射角,光の波長に対する反射特性の評価)の評価を行う.
|