環境負荷インパクトの小さい高速電気めっき技術の開発は、電子部品の根幹を担う回路基板製造における危急的課題である。本研究課題の最終年度である本年度は、固相電析法(SED法)におけるイオン輸送相に固(電解質膜)-液(電解液)界面を導入し、「電極ー電解質膜ー電解質溶液-電極」の4相電気化学系における銅イオン輸送モデルを構築し、最大電流密度を達成するためのセル構造の最適化を行うとともに、理論モデルの妥当性について検証した。イオン輸送モデルにおいては、カソード表面でのイオンの還元、界面におけるイオンペネトレーションおよび電解質溶液層におけるイオンの拡散を速度論的に記述し、非線形常微分方程式を得た。この方程式を数値解析によって実測電流値をフィッティングすることで、イオンの還元析出およびペネトレーション速度定数を算出し、電流ー時間曲線を再現可能な理論モデルの構築に成功した。 また、本手法の光沢めっき技術への応用可能性を開拓するため、各種添加剤を電極表面に予備吸着させ、電解質膜を接触させることで電気めっきを行った。その結果、SED法においても析出した銅皮膜表面の平滑化が確認され、廃液を産出しない光沢めっきへのSED法の適用が可能であることが明らかとなった。さらに、本手法をニッケルめっきに応用したところ、電解質溶液を酸性にすることによりアノード溶解が促進し、ニッケル皮膜の析出にも成功した。今後SED法は種々の金属めっきにおける環境負荷の低減に大きく貢献すると期待できる。 以上の結果により、次世代の「新規低環境負荷めっきプロセス」の実現に向けた化学的アプローチを提案するとともに、固-液界面におけるイオン輸送メカニズムの一端が明らかとなった。
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