研究課題/領域番号 |
20H02490
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
小畠 秀和 同志社大学, 研究開発推進機構, 教授 (10400425)
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研究分担者 |
笹嶋 尚彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (70357127)
杉岡 健一 富山県立大学, 工学部, 准教授 (80438233)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 溶融金属 / 浮遊法 / 温度測定 |
研究実績の概要 |
鋳造や溶接などのプロセスの最適化や新しい技術開発のために、高温で溶融状態にある物質の粘性データが必要とされている。しかし、粘性の報告値には20%以上のばらつきがあるため、多成分系の粘性を表すことができるシステマティックなモデルは構築されていない。溶融金属試料と容器との反応についての問題は、電磁浮遊法や静電浮遊法などに代表される浮遊技術によって解決されつつあるが、電磁浮遊法での測定では、振動の励起を引き起こす電磁攪拌力の存在、静電浮遊法では雰囲気制御が困難であるため粘性測定は難しい。そこで本研究では密閉型ガスジェット浮遊装置を利用した雰囲気を制御した非接触での粘性測定を目的とした。2021年度では、ガスジェット浮遊装置での液滴振動法による溶融金属の粘性測定と非接触での放射率に依存しない温度計測を行った。 本研究で製作した密閉型ガスジェット浮遊装置により、Ar-H2混合ガスで金属試料を浮遊・融解させることで酸化を防いだ実験が可能となった。この装置に音響装置を組み込むことで溶融金属の表面振動を励起させ、粘性測定に必要な表面振動の減衰過程を高速度カメラで撮影し解析した。この方法で測定された粘性は既存のデータに比べてやや高い値を示す傾向にあり、ガス気流により誘発される液滴内の対流が測定に影響を与えていると考えられる。2022年度では、最適な粘性測定条件をシミュレーションと実験を合わせて改良し、系統的なモデルの構築に向けた粘性測定を行う。 一方、非接触での放射率に依存しない2波長反射率比法による温度計測を試みた。本手法を溶融金属に対しても適応することで、温度の決定に必要なデータが取得できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度では本研究を通じて開発した密閉型のガスジェット浮遊装置を用いて粘性測定を行うことができた。測定データは既存のデータに比べてやや高くなることが分かった。これは、ガスの流れによって液滴内の流れが誘発されるためだと考えられる。 また、非接触での放射率に依存しない2波長反射率比法による温度計測を試みた。本手法を溶融金属に対しても適応することで、温度の決定に必要なデータが取得できることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度行った密閉型ガスジェット浮遊装置を利用した液滴振動法による粘性測定の結果、測定値は既存のデータに比べてやや高くなることが分かった。2022年度ではシミュレーションの結果と比較しながら最適な測定条件を決定する。必要に応じて補正式の検討を行う。また、本手法を溶融合金に適応して粘性測定を進める。 一方、2021年度では2波長反射率比法による放射率に依存しない温度測定の融体に対する適応を試みた。2022年度はこの手法による融体の温度測定結果の妥当性について検証を行う。
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