研究課題/領域番号 |
20H02491
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
夏井 俊悟 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (70706879)
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研究分担者 |
植田 滋 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (80359497)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高温融体界面 / 電位・電流応答 / 流体力学 |
研究実績の概要 |
本年度も電気化学反応が進行する高温融体界面挙動の計測を継続した。特に、課題②として設定した、銅含有溶鉄(メタル)-溶融酸化物(スラグ)界面についての検討を重点的に行った。すなわち、Cuを含む炭素飽和溶融鉄-溶融スラグ相界面をアノード分極することで、Cuの溶鉄からスラグへ除去可能な新たなコンセプトを提案し、これについて考察した。1773 K、Ar雰囲気におけるメタル相Fe - 10 wt%Cu - 5.0 wt%Cおよびスラグ相27 wt%CaO - 27 wt%SiO2 - 45 wt%Al2O3 - 1.0 wt%CaSの界面の電位を 1.0-2.0 V vs. Ptに種々の時間保持して定電位電解を実施した。貴の電位に保持するほど、スラグ中のCu濃度が増加する傾向が得られた。純金属のスラグ中での標準電極電位は、Cuの方がFeより約 0.5 Vも電位が貴で、スラグ中に溶解しにくいはずであるが、実際にはCuは溶解した。界面張力、表面状態、kineticsの観点から現象のメカニズムを考慮している。特に、実験では分極によってCu-rich相が金属-スラグ界面の近くで検出され、Cuが界面近くに明らかに集中することがわかっている。つまり、電気毛細管現象によってFe-rich相-スラグ界面エネルギー、およびCu-rich相-スラグ界面エネルギーの両方が低下して界面付近で優先的にCu-rich相が反応したと考えられる。この仮説を実証するために多相界面が存在する系における数値流体力学シミュレーションを実施した。各界面張力から求めた拡張係数で予測されるように、大きくアノード分極した場合には、Cu-rich相がFe-rich相を覆うように移動し、Fe-rich相-スラグ相界面が消失する数値解析結果が得られたので、流体力学的因子よりも界面張力によって界面形態が決定されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
電気化学反応が進行するときの熱移動計測から現象理解を深めることができ、本年度はさらにマルチフィジックス・シミュレーションを補助的に利用することで実験結果の説明に取り組むことが出来た。当初実施予定であった両アプローチが実践できたことから十分な進捗を報告できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、実験的アプローチとして高温場における種々制約が存在している中での熱・物質移動促進についてその有用性を探査していく。 課題①として設定した溶融塩化物系は比較的低温で動作するので、電極への振動印可や回転操作が検討しやすい。このように動力学的操作が生じるときの移動現象については報告例はほとんどなく、ハイスピードカメラによる直接観察も併用して現象理解を深めたい。 課題②の溶融鉄-スラグ系については、実験を継続しながら本年の報告書に記載したような、実測困難なメカニズムについて計算科学的検討も追加して行いたい。すなわち、Fe、Cu、C、S等元素の合金中の化学ポテンシャル、スラグ中の化学ポテンシャルを計算科学的に求め、さらにアノード分極したさいの界面挙動についてもシミュレーションを検討したい。
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