研究課題/領域番号 |
20H02492
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
朱 鴻民 東北大学, 工学研究科, 教授 (80713271)
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研究分担者 |
LU XIN 東北大学, 工学研究科, 助教 (00781452)
竹田 修 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60447141)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | チタン粉末 / 3Dプリンター / シャトル反応 / 溶融塩 |
研究実績の概要 |
チタンおよびチタン合金は宇宙航空産業等に不可欠な材料である一方、活性かつ難加工材であり、精密複雑形状部材の製造が難しい。近年、技術革新の著しい3次元積層造形法(3Dプリンタ-)によって、複雑な部品を精密に加工することが可能になってきた。その原料であるチタン系微粉末は現在ガスアトマイズ法等によって製造されているが、チタン及びチタン合金は活性であり、溶融に2000 Kを越える高温が必要といったことにより、製造コストが極めて高い。本研究では、溶融塩化物中におけるチタンイオンのシャトル反応(3Ti^2+ = 2Ti^3+ + Ti)を効果的に利用し、スポンジチタンを原料とした比較的低温(673~1073 K)の単一工程でチタン及びチタン合金微粉末を製造する方法を開発する。簡易な製造装置で連続・高効率製造を可能にすることによって、製造コストの抜本的低下を実現し、宇宙航空産業だけでなく、電気自動車やロボット分野におけるチタンの用途拡大を狙う。 2020年度は、溶媒塩種による金属粉末分散速度、金属粒子径、均一性などへの影響を考察、検討した。具体的には、LiCl-KCl浴(773 K)およびNaCl-KCl浴(1023 K)での粉末製造実験を行い、得られた粉末では、いずれも粒径が1 micron以下の一次粒子が凝集し、数十micronの二次粒子を形成していた。現在のところ、塩種による顕著な差異は認められていない。また、反応セルの設計と原料金属塊付近の攪拌条件を調整しながら、この律速過程を究明し、高速で微粉末へ転換する条件を確立することを狙った。具体的には、溶融塩浴のArバブリング攪拌、浴のインペラ(翼)攪拌、原料チタンの回転攪拌、などの攪拌方式を試し、原料チタンの回転攪拌によって顕著な粉末製造効率が得られることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表者は金属製精錬プロセス、溶融塩電気化学の研究のエキスパートであり、特にチタン、レアアース、マグネシウムなど活性金属に関する電気化学製錬について、豊富な知識と研究経験を有する。なお研究分担者の竹田とLuも、金属製精錬、リサイクルの専門家である。特に竹田は長年、溶融塩電気化学、高温化学プロセスの研究を行なっており、特にチタン製錬についてすでに研究経験がある。以上を基盤として研究計画は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
代表者は、継続して全体計画・結果の取りまとめ、および、チタン金属及び合金微粒子形成に影響する物理化学的因子の究明を担当する。同様に、分担者 竹田は一次粒子、凝集体のサイズ制御及び試料の分析・評価を行う。分担者 Luは合金成分、および組織の制御、均一性についての研究を行う。 代表者の研究室は基本的な高温実験装置および電気化学装置を保有している。活性の高いチタン金属粉末や吸湿性の強い塩を扱うグロープボックスも整備済みである。また、溶融塩を使う研究は反応容器が特殊であるため、専用の反応容器を自作する必要がある。そこで、装置の設計は申請者が行い、資材を購入して学内の技術部(製作室)で製作する。 代表者は、この不均化反応/均化反応のシャトルによるチタン及びチタン微粉末の製造プロセスの実行可能性を確認する研究を先行して展開してきたため、本研究で実験に必要な基本的な設備、および装置は整っている。微粉末の形成過程をその場で観察するための石英反応管は設計・加工する。なお、反応経過に伴う微粉末のサイズ、合金組成の経時変化を計測するため、原料の金属、塩、更にシャトル媒体のチタン塩を随時添加でき、更に、微粉末を採取できる反応器を設計・製作する。微粉末の組成分析(ICP-AES、LECO等)、組織-組成分析(SEM-EDX、EPMA、XRD等)、粒径分布分析(レーザー粒度分析計LMS-2000e等)等に必要となる分析装置は学内の共通設備を利用する。
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