研究課題/領域番号 |
20H02500
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
稲澤 晋 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30466776)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シリコン / Vapor-Liquid-Solid / 再結晶化 / 溶解 / 金属触媒 |
研究実績の概要 |
亜鉛金属が結晶化触媒として作用するVapor-Liquid-Soild(VLS)プロセスで生成したシリコンウィスカーが、金属亜鉛融解にどの程度溶けやすいのか、実験で検証をした。SiCl4ガスを亜鉛蒸気で還元させると固体シリコンが生成する。このとき、亜鉛蒸気の一部が凝縮し液滴となって、シリコンの結晶化を助ける触媒として作用する。ケイ素原子が金属亜鉛の融液に溶け込み、過飽和状態となって、結晶性が高いシリコンウィスカーが自発的に生成する。本研究では、既に合成したシリコンウィスカーやナノワイヤー同士を原子レベルで接合する技術開発を目的としている。原料ガスに含まれるケイ素は金属触媒に自発的に溶解するが、固体シリコンはどの程度の速度で溶解するのか。これを実験で確認する必要があった。20年度は、この課題に取り組み、我々が合成したシリコンウィスカーと金属亜鉛融液とを接触させ、溶解速度を測定した。 ウィスカーと金属亜鉛の濡れ性が悪いままだと溶解が極めて遅いこと、濡れ性が良い条件にすればウィスカーの溶解が起こること、を確認した。単に固体シリコンと金属亜鉛とを接触させればよいわけではなく、速やかな溶解にはそれに適した表面状態にする必要があることを明らかにした。原料ガス中のケイ素が金属融液に溶解する速度に比べると、固体シリコンの溶解速度は極めて遅いが、接触部分のみを溶解させるにはおそい溶解速度は寧ろ望ましい可能性がある。今後の検討を進める上で重要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、金属亜鉛へに固体シリコンが溶解しやすい条件を突き止めることが出来た。固体シリコンと融液との接触界面をどの程度改質すれば良いのかは、引き続きの検討項目であるが、初年度の取り組みとしては順調な成果が得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の検討を引き続き進めながら、二年目である21年度は、「あらかじめ合成したシリコンウィスカー」の上に、別のシリコンウィスカーやナノワイヤーを生成させる技術の検討を行う。初年度に検討した合成したウィスカー同士の接合技術と併用できれば、目的とする用途に応じた接合技術の選択肢を提示できる。ウィスカー上に適切に金属触媒を存在させること、および気相での化学反応を適切に起こすことが不可欠であることを踏まえて、これらに取り組む。まずは観察のしやすい"whisker on whisker"の生成を目指す。特に後で生成したウィスカーの根元がどの程度、下のウィスカーと密着/接着をしているのか、原子レベルでどのように接合をしているのか、を明らかにする。ウィスカーでの検討を踏まえて、"nanowires on whisker"への展開を目指す。
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