研究課題/領域番号 |
20H02504
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮原 稔 京都大学, 工学研究科, 教授 (60200200)
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研究分担者 |
渡邉 哲 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80402957)
平出 翔太郎 京都大学, 工学研究科, 助教 (60853207)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 核生成 / 分子シミュレーション / 自由エネルギー / 確率論 |
研究実績の概要 |
粒子材料の機能性制御には,粒子合成の初期過程である核生成現象の理解が不可欠である。分子種や操作条件に応じて核生成の経路は多様に変化するが,経路を決定づける鍵因子は不明である。そこで本研究では,核生成過程の分子シミュレーションとそのモデル化に基づく自由エネルギー解析により,核生成経路の決定因子の解明を試みた。その結果,溶質間および溶媒間の相互作用を変化させるだけで,核生成の経路がバイノーダルからスピノーダルへ,また1段階から2段階へと多様に変化することを明らかにした。これらの結果を踏まえると,溶質と溶媒分子の相互作用のバランスが母相の過飽和度と液クラスターの過冷却度のバランス,すなわち母相・液クラスター・結晶の相対的な安定性に帰結し,それにより経路が決まると考えられる。この核生成過程における系の自由エネルギーを計算するモデルを構築し,それによって,核生成の経路を予測できることを見出した。さらに,Auナノ粒子を対象に核生成過程を実験的に検出可能かどうか検討した。本検討では,Auナノ粒子が表面プラズモン共鳴に起因する吸光ピークを持つことに着目し,合成中の吸光度を追跡することで核生成の検出が可能であることを見出した。また,核生成時間の分布がポアソン過程に従うと仮定することで,核生成速度式・粒子成長速度式のパラメータを導出し,さらには,これらのパラメータを用いることで粒子径分布推定の可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子シミュレーション検討,実験的検討ともに,計画した内容が実施できているため。
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今後の研究の推進方策 |
分子シミュレーション検討については,分子サイズの影響,すなわち溶媒,溶質のサイズ比が核生成経路にどのような影響を与えるかを詳細に検討する。その上で,本年度に構築した自由エネルギー解析モデルを活用し,核生成機構を決定づける因子の解明に取り組む。さらに,実験系との比較を行うため,2種類の溶質と溶媒からなる3成分系の分子シミュレーションモデルの構築と検討を進める。一方で実験では,3成分系と対応するような,Metal-Organic Framework(MOF)粒子の合成に取り組み,反応速度が得られる粒子サイズ,サイズ分布に与える影響を検討する。その上で,分子種の特性を相互作用パラメータ,サイズに代表させ,それらを用いて,シミュレーション結果との比較を通して,粒子サイズ分布の予測モデルの構築へとつなげる。
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