研究課題
本研究では、高純度のウルトラファインバブル懸濁水サンプルを調製し、ウルトラファインバブルの生成と安定な存在状態を計測および分析を行い、ウルトラファインバブルの生成・安定メカニズムを実験的に解明する。本年度は水中に浮遊するウルトラファインバブルと媒体となっている水との分離により、ウルトラファインバブルの数濃度の濃縮技術開発とそのメカニズム解明を行った。(1)界面前進緩慢凍結法によるウルトラファインバブルの分離ウルトラファインバブルを含む水が一方向に非常にゆっくりと凍結するとき、氷表面は未凍結水との濡れ性が極めて大きいため、氷面に付着したウルトラファインバブルは未凍結水によって剥離され接触しない。したがって氷結晶面の成長中に氷相内にウルトラファインバブルは取り込まれず、未凍結水中への偏在が起こり水中に濃縮されると考察された。(2)水相蒸発によるウルトラファインバブル濃縮ウルトラファインバブル水を減圧下でゆっくりと蒸発させると、未蒸発水中にウルトラファインバブルが濃縮された。水面上の空気と接する自由水面と水に囲まれたウルトラファインバブル表面は共に同質の気液界面である。超純水中でウルトラファインバブルの表面は負に帯電していることが実験的に確かめられた。それ故自由水面とウルトラファインバブルとは電気的に反発し、自由水面近傍はウルトラファインバブル数濃度が希薄になる。水分子の蒸発が自由水面に十分近い付近で起こるとき、水中のウルトラファインバブルに与える影響は小さい。この現象によって、蒸発残液中にウルトラファインバブルは残存し濃縮された。以上の研究結果より水中のウルトラファインバブルの濃縮とそのメカニズム提案に成功した。
2: おおむね順調に進展している
(1)界面前進緩慢凍結法によるウルトラファインバブルの分離計画した通り、界面前進緩慢凍結試験装置を試作して十分な実験データを取得した。(2)水相蒸発によるウルトラファインバブル濃縮計画した通り、水相の減圧蒸発装置を試作し、実験データを順調に取得した。
次年度は計画通り、貧溶媒発泡によるファインバブル生成法の開発と仮説の検証を実施する。Lohse et al.(2016)の論文によれば、固体平面上にガス溶解度の異なる溶液を順に浸漬させると、固体面上で「表面ナノバブル」を形成される。これは一種の貧溶媒発泡現象と考えられる。そこで本研究では固体平面との接液無しに、液バルク中でガス溶解度の異なる2液の接触による貧溶媒発泡を実現し、ファインバブル生成を確認する。2液混合によるガス溶解度変化の時間変化と空間分布の違いによって気泡核生成率を制御する。気泡核から成長して生成したファインバブルのサイズ分布や生成速度を実験的に調べる。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 図書 (2件) 産業財産権 (2件)
混相流
巻: 36 ページ: 4-11
10.3811/jjmf.2022.T001