研究課題/領域番号 |
20H02509
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
相田 卓 福岡大学, 工学部, 助教 (00466541)
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研究分担者 |
シャーミン タンジナ 福岡大学, 工学部, 助教 (00794182)
三島 健司 福岡大学, 工学部, 教授 (40190623)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リポソーム / 超臨界二酸化炭素 / 連続調整 / 向流接触法 / 超音波 |
研究実績の概要 |
医療用ナノ・リポソーム(LS)生産の課題は,有機溶剤を使用しない生産性の高い連続式のプロセスの開発である.本研究では,高収率とナノ化が同時に可能な連続式の調製法の開発を行う.具体的には,縦型の向流反応器に,圧力条件一定下(8MPa)で高温(60℃)から低温(10℃)まで温度勾配を与え,塔頂から原料のリン脂質懸濁液,塔底から液体CO2を供給し,リン脂質懸濁液とマルチに相変化した高圧CO2(気相→超臨界相→液相)を向流接触し,超音波を直接照射し,反応メカニズムを解明し,本現象を制御することで高収率にナノLSを連続調製する手法を開発する. 本年度は,既存の回分式反応装置を用いて,圧力(8-10 MPa),温度(高温:60-70℃,中温:30-40℃,低温:10-20℃),超音波照射時間(0 s, 125 s, 250 s, 600 s)の条件で実験を行い,二酸化炭素の相変化(ガス,超臨界,液体)がLS生成に及ぼす影響について検討を行った.本年度、購入した備品、バイオ医薬品凝集性システム Aggregates Sizer(SALAD7500)及び,HPLC制御システム(JASCO・CROMNAVI等)は,調製したリポソームの粒径分布と濃度,薬剤の内包率の評価や,エマルション抽出を利用した医療用ナノ粒子,レスベラトロールナノカプセルの評価に用いた.一方で、水と二酸化炭素が共存する高圧条件において超音波の直接照射と、水と二酸化炭素の連続供給と回収が可能な向流接触式流通装置の作成について検討を進めた.本装置に必要な備品の購入は完了している.向流接触式流通装置は,3つのモジュールの連結構造をとるが、本年度は,1つの基本モジュール(回分式)で試験機を作成し,高圧条件(10MPa)で実験が可能であることも確認した.現在、回分式装置である本試験機を、向流接触式流通装置への改良を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ナノLS調製に有用な条件の選定を目的に、既存の回分式反応装置を用いて,圧力(8-10 MPa),温度(高温:60-70℃,中温:30-40℃,低温:10-20℃),超音波照射時間(0 s, 125 s, 250 s, 600 s)の条件で実験を行い,データの蓄積を行ってきた.ナノLS調製の最適条件についても選定できており、計画はおおむね順調に進展している.また、向流接触式流通装置の開発については、装置の作成に必要な備品等の購入は完了している。向流接触式流通装置は、三つのモジュールの連結で構成されている。本年度は、その1つのモジュールについて、回分式装置を設計し、この試験機を作成した。試験機を用いた予備実験において、超臨界状態(35℃、10MPa)の二酸化炭素において超音波の直接照射が可能であることを確認した。現在、回分式装置である本試験機を、水と二酸化炭素の連続供給、回収が可能な向流接触式流通装置への改良を進めている。今後,装置の健全性評価を行い,向流接触式流通装置を完成させ,本システムの最適化に向けたデータの蓄積を行うため,目標達成に全く問題はない.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は,令和2年度で用いた回分式装置を向流接触式流通装置へと改良し,本装置の健全性を評価し,定常運転に必要な操作スキルを習得し,ナノLSの連続調製を試みる.具体的には,まず,(1)令和2年度で使用した回分式装置を水と液体CO2の向流接触と超音波の直接照射が可能な仕様への改良を行い,装置の健全性を評価する.次に,(2)向流装置を3つ連結させ,温度勾配を持たせた(高温:60-70℃,中温:30-40℃,低温:10-20℃)装置へと改良し,装置の健全性について検討する.(3)最後に,(2)で開発した向流式流通装置を用いてナノLSを調整し,操作因子(温度,圧力,超音波時間,溶媒滞在時間,CO2滞在時間)がナノLSの安定性に及ぼす影響を明らかにする.相平衡,移動現象,反応速度による定量化を行い,ナノLS相の安定性に及ぼす反応因子の解明を試みる.蓄積したデータは,次年度の薬剤内包ナノLSの調製に向けた条件選定に用いる.
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