2022年度は以下を実施した. A. 流体解析: 前年度に引き続き,マイクロ流路と貫通スリットが交差する三次元構造およびその近傍の表面濡れ性がどのように液滴生成挙動に影響を及ぼしているのかをより理解するため,ANSYS-Fluentを用いて単一流路および並列流路構造のモデルにおいてさらなる検討を進めた.その結果,液滴生成部の3次元形状の違い,平行スリット型の両端部形状,および分散相,連続相の入力方法が液滴生成に与える影響について,実験データと程よく一致する解析結果が得られた. B. デバイス作製:マスクレス露光装置を用いたソフトリソグラフィにより,PDMS流路の微小化(最小幅~10um)に取り組んだ.一方,ガラス流路の並列本数の増加(>16本)のため,最小径100umの軸付砥石を複数用いる機械加工による合成石英基板への溝加工に取り組んだ.また,多相液滴や機能性粒子の生成用に最小幅100umのスリットを4つ有するステンレス製のスリット部品をワイヤ放電加工を用いて作製した. C. 液滴・粒子生成試験:上記手法により作製したデバイスを用いた各種液滴生成試験を行った.一例として,4スリットを有するスリットデバイスに,16-128本のマイクロ流路が並列化されたPDMSチップを貼り合わせてデバイスを形成した.このデバイスに,第1分散相としてアクリルモノマー,第2分散相としてシリコーンオイル,連続相としてPVA水溶液を導入することにより,先ずアクリルモノマーとシリコーンオイルの二相並行流がアクリルモノマーが流れるマイクロ流路と第2分散相供給スリットの交差部にて形成された.さらに,その二相並行流が連続相供給スリットと交差する箇所にて,サイズの揃った二相液滴が並列流路で連続生成される様子を確認した.またシリコーンオイルに添加する界面活性剤の濃度調整により,サイズの揃った二相ヤヌス液滴あるいは二相コアシェル滴が本デバイスで生成できることを確認した.
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