研究課題/領域番号 |
20H02518
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
前野 禅 北海道大学, 触媒科学研究所, 特任講師 (30721154)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 表面ヒドリド / 卑金属元素 / 典型金属元素 / 水素化物 / ゼオライト / 脱水素反応 |
研究実績の概要 |
(1)典型金属元素であるInをCHAゼオライトに導入した触媒を高温で水素処理すると、Inヒドリド種が生成することをin situ分光・理論計算により明らかにした。熱力学的には不安定なヒドリド種は、ゼオライト細孔内で速度論的に安定化されることで、高温でもヒドリド種が存在することが示唆された。このゼオライト内ヒドリド種は、選択的エタン脱水素反応の活性点として作用し、90時間以上活性の低下なく反応を促進した。さらに、ゼオライト細孔径の影響を検討するために、InをMFI、MOR、BEAゼオライトに導入した触媒を用いてエタン脱水素反応を検討したところ、In-CHAのみが高い活性を示した。速度論・in situ 分光・理論計算から、CHAゼオライト内でのみヒドリド種が生成することを明らかにした。遷移金属元素と比較して未開拓な典型金属元素の触媒作用を見出すことに成功した。現在、同じ13族金属のGaヒドリド種をゼオライト内で構造制御し、より優れた触媒の開発を検討している。 (2)卑金属ヒドリドとして、高温でも比較的安定なTiH2のプロパン脱水素触媒作用の活性を調査した。450℃の低温域では、TiO2やTiNよりも高い転化率で反応を促進することを見出した。また、他の4族金属の水素化物であり、高温でも安定なZrH2、HfH2とも比較し、転化率の序列がTiH2>ZrH2>HfH2となる知見を得た。現在、3族金属の水素化物であるYH2や、5族金属の水素化物であるVH2など、金属水素化物の脱水素触媒作用探索を網羅的に探索している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゼオライト内イオン交換サイトが表面金属ヒドリド種の固定化サイトとして機能すること、金属水素化物が低級アルカン脱水素能を示すことを見出しており、一定の知見が得られている。種々の金属導入ゼオライトや水素化物を網羅的に検討することで、優れた触媒開発を目指す。
|
今後の研究の推進方策 |
Inゼオライトで得られた知見に基づき、活性は高いが、選択性が低いとされているゼオライト内Gaヒドリド種の精密制御により、高活性と高選択性を両立した脱水素触媒を開発する。予備的検討により、「[GaH2]+@1Alサイトは高選択的な活性点である一方、[GaH]2+@2Alサイトは非選択的な活性点である」という構造活性相関の知見を既に得ている。この独自の知見に基づいた設計指針で触媒開発を行う。加えては、in situ 分光測定を駆使し、高温条件下での表面ヒドリド種の存在を示す。
|