研究実績の概要 |
1,2-および1,3-ジオールの内部水素化分解反応について、Ir-Fe系触媒の開発を継続して実施した。担体に、Ir微粒子を高濃度で集積することが可能とこれまでに明らかにしている低比表面積ルチル型チタニア(TiO2-r)を用いることで鉄でよく修飾されたIr粒子を形成できた。このIr-FeOx/TiO2-r触媒を用いると、1,2-ジオールの末端:内部切断選択性比は約10:1となり、1,2-ブタンジオールから2-ブタノールを64%収率で得ることに成功した。2-ブタノールのバイオマスからの化学合成では、C5のレブリン酸の脱炭酸を経るルートが報告されているが、C4の脱酸素による合成としては初めて実用的な収率が得られた。この触媒をさらにエリスリトール基質に適用することで、末端OH基の切断除去を2回行い、2,3-ブタンジオールを30%収率、最大濃度の生成物として得ることができた。触媒的脱酸素による2,3-ブタンジオール合成として初めての例となる。この反応の開発により、全てのブタンジオール(1,2-, 2,3-, 1,3-, 1,4-)のバイオマス由来化合物脱酸素による合成が可能となった。 さらに触媒の改良を進め、酸化物系担体以外も検討したところ、窒化ホウ素(BN)担体を用いるとイリジウム-鉄合金粒子が表面上にナノデンドライト状(ナノサイズの樹形構造)に生成し、かつTiO2-r担体触媒に比べ高活性を示すことが明らかにした。 同時隣接ジオールの同時除去反応について、昨年度までに開発したMo活性点、アナターゼチタニアを担体とする触媒の開発を進め、助触媒として安価な銅も用いることができることを見いだした。さらに、チタニア担持Mo種が持つ酸性による副反応について、酸点をNa添加で中和しながら触媒を調製し抑制する手法を見いだした。これにより酸により環化が問題となるC4以上ポリオールへの適用の道が開けた。
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