研究実績の概要 |
昨年度までに、Feとバリウムジルコネート(BaZr0.8Y0.2O3-δ, BZY)の焼結体を電極触媒とした際の、アンモニア合成における電気化学的な促進効果は、電解合成反応温度により異なることを報告した。リン酸二水素セシウム(CDP)を電解質とした200℃付近での電解合成では、アンモニア合成電極の表面吸着種をFT-IRでその場観察した結果、電圧を印加することでN2Hxの生成に対応する吸収ピークが現れ、窒素分子にプロトンもしくは水素原子が付加してから窒素原子間の結合が解離し、アンモニアが生成する反応機構を支持する結果が得られた。本年度は、電極触媒中のBZYの役割を明らかにする検討を続けた。ナノサイズFe2O3とRuを複合化した電極とCDP電解質を用いて、アンモニア電解合成を行ったが、200℃ではアンモニアの生成は見られなかった。電極触媒のXRD測定の結果、Feはα相のみが存在することが分かった。Fe-BZY電極触媒におけるBZYは、Feが活性の高いγ相で存在するために必要であることが示唆された。またFe-BZYを電極、BZYを電解質として、200℃付近でのアンモニア電解合成におけるFT-IRによる電極触媒表面のその場観察をした。これはBZYを電解質とすることで、プロトン供給量が極めて少ない分極状態で、電極表面のその場観察をするためであった。この条件では、分極によるN2Hxのピーク生成は観察できなかった。これらの結果から、200℃付近でのアンモニア電解合成では、活性の高いγ相のFeが存在し、プロトンが電極反応場に十分に供給されることが、アンモニア生成に不可欠であることが分かった。
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