研究課題/領域番号 |
20H02525
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
天野 史章 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (10431347)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 光電気化学 / 半導体電極 / 光触媒 / 水分解 / メタン変換 / 水素製造 |
研究実績の概要 |
全固体型の光電気化学システムを用いて、水蒸気供給による水の光電解反応およびメタンの光電解反応の開発を継続して行った。電極材料としては、開発した酸化タングステンやチタンドープ酸化鉄などの多孔性半導体電極の光電解反応特性を調べた。チタンドープ酸化鉄電極では、2段間の加熱処理で電子密度を制御することによって光電流が向上することを示した。また、多孔質のチタン繊維を電極基材にすると、従来の平板形状の基材を使ったときより、高い光電流値を得られることを示した。これはチタン繊維の表面積が大きいために、酸化鉄の担持量を増やしても励起電子の移動距離を短く保てることに起因する。 水蒸気およびメタンの光電解反応において、半導体の種類によって生成物の選択性やイオノマーの分解挙動が変化することを明らかにしてきた。活性種としてヒドロキシラジカルの関与が示唆されるため、電子スピン共鳴(ESR)によるラジカル種の分析を目指した。ニトロン化合物をトラップ剤とするスピントラップ法を用いて、光照射によって生成したラジカルを評価するためのフローセルESRシステムを構築した。 気相光電解反応では、活性(光電変換効率)、反応選択性、寿命の3つの指標について性能の改善を目的として、材料の特性を評価した。また、印加電圧・光強度・水蒸気分圧・メタン分圧・反応温度などの反応条件が性能に及ぼす影響を引き続き調査した。 光電解反応のモデルとして、光触媒反応によるメタン転換反応についても検討を進めた。酸化ガリウム光触媒を中心に検討を進めたところ、助触媒としての担持金属粒子の種類によって反応性が変化することがわかった。この光触媒反応においてヒドロキシラジカルの生成量と反応選択性の相間を調べることで、反応機構を明らかとし、活性種制御のための理解を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光電解反応において生成するヒドロキシラジカルを分析するためのフローセルESRシステムを構築した。これを用いてヒドロキシラジカル生成への反応条件の影響を検討することができる。
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今後の研究の推進方策 |
光電解反応のモデルとなる半導体光触媒反応では、光触媒の種類によって水蒸気分解およびメタン転換反応における反応選択性が変化することを明らかにしてきた。酸化ガリウム光触媒についてESR法によるラジカル種の分析を行ったところ、ヒドロキシラジカルの生成量と反応選択性の間に相間が見出された。また、ニトロン化合物をトラップ剤とするスピントラップ法を用いて、光照射で生成したラジカル種を速やかに定量するフローセルESRシステムを構築している。そこで本年度は、光電解反応において生成するヒドロキシラジカルのESR分析を進める。光電解反応時におけるヒドロキシラジカルの生成量と反応結果との相関を調べることによって、反応活性種や電極の劣化機構について理解を深め、活性種制御の検討を進める。
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