研究課題/領域番号 |
20H02526
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
竹中 壮 同志社大学, 理工学部, 教授 (10302936)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 貴金属ナノシート |
研究実績の概要 |
貴金属は様々な反応の触媒活性成分として利用されているが,高価であるため貴金属の使用量低減が求められている.貴金属触媒の使用量低減には,触媒設計の指針となる貴金属の触媒作用の理解が重要である.そこで組成および幾何学的・電子的構造が制御された貴金属および貴金属系合金粒子の触媒作用が検討されている.本研究では,酸化グラフェンが有する2次元ナノスケール層間を利用したナノシート調製法により貴金属および貴金属系合金から構成される単結晶ナノシートを調製するとともに,ここで得られた貴金属系ナノシートを触媒反応に利用し,貴金属および貴金属系合金の触媒作用を明らかにする.これまで貴金属の触媒作用解明に球状ナノ粒子が利用されてきたが,それらの表面には配位不飽和度の異なる原子が多数存在するために貴金属の触媒作用の理解は困難であった.一方単結晶ナノシートを構成する表面原子の配位不飽和度は均一であるため,単結晶ナノシートを用いることにより貴金属および貴金属系合金の触媒作用の理解が深まると考えている. 我々はこれまでに酸化グラフェン層間を利用して単結晶Ptナノシートの調製に成功している.そこでこの方法を応用してPdおよびRhナノシートの調製を試みた.塩化Pd水溶液あるいは塩化Rh水溶液をシクロヘキサン中に滴下し,ここに酸化グラフェンの粉末を分散させ,それぞれの金属カチオン水滴内で酸化グラフェンを積層させた.その後,これらの試料をオートクレーブ内で加熱したところ,Pdに関しては球状ナノ粒子が生成したものの,Rhはナノシートが生成した.この調製法では,酸化グラフェン層間内で金属核が2次元成長することでナノシートが生成する.Pt,Rhでは層間内で溶解・再析出が進行し,金属ナノシートが生成したと考えている.Pdでは溶解・再析出を促進させるPdカチオンの保護剤を添加することがナノシート化に必要と考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では本研究では,酸化グラフェンが有する2次元ナノスケール層間を利用したナノシート調製法により貴金属および貴金属系合金から構成される単結晶ナノシートを調製するとともに,ここで得られた貴金属系ナノシートを触媒反応に利用し,貴金属および貴金属系合金の触媒作用を明らかにすることを目的にしている.これまでに我々は酸化グラフェン層間を利用することでPtナノシートの調製に成功しており,昨年度はこの方法を応用してRhのナノシート化に成功した.また酸化グラフェン層間を利用した方法で貴金属系合金ナノシートの調製が可能か,否かの予備実験を行ったところ,合金ナノシート調製が可能であることが示唆された.このように昨年度の研究で貴金属ナノシートの調製に目途がついている点から,研究は順調に遂行できていると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,貴金属系触媒の貴金属使用量低減を目的に,各種貴金属および貴金属系合金ナノシートの調製法を確立するとともに,調製した貴金属および貴金属系合金ナノシートの触媒作用を明らかにする.我々が独自に開発した積層した酸化グラフェン層間に金属カチオンを閉じ込め,その場で金属カチオンを還元させる方法により, Rhナノシートの調製に成功し,Rh-Pdナノシート化の可能性も示唆された.しかしこの方法では,Pt系合金のナノシート化はできなかった.そこで今年度は,Pt系合金ナノシートの調製を目的に,金属カチオンの還元方法を検討する.これまでは金属カチオンを還元する際には,高温での加熱を行っていたが,これではPtに添加した金属種の還元は行えなかったため,より強い還元剤の使用を検討する.具体的には,アスコルビン酸,ホルムアルデヒド,水素などの使用を検討する.またPdのナノシート化も達成できていないため,Pdカチオンの安定化剤の添加などを行うことで,ナノシート化を行う予定である.さらに調製に成功したナノシートを触媒として利用することを想定しているが,その際には金属表面を露出させるために,テンプレートとして利用した酸化グラフェンの除去が必要である.そこで調製した金属ナノシートからのテンプレート除去を試みる.テンプレートは酸化グラフェンであるため,水素あるいは酸素による酸化グラフェンのガス化,あるいは過マンガン酸カリウムに代表される酸化剤を利用した酸化グラフェンの剥離除去を検討する予定である.これらで除去できない場合には,合金の触媒作用を利用し,合金表面のみの酸化グラフェン除去を検討する.
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