研究課題
新しいタイプの光触媒としてプラズモニック光触媒が本格的に研究されてから10年ほどが経過したが、Auを用いるプラズモニック光触媒単独の研究としては飽和しており、その多くが他の光触媒と組み合わせるなどの複合化の段階に移っている。本研究はこのような複雑系の潮流には乗らず、プラズモニック光触媒研究の未踏部分に挑戦した。つまり、「汎用元素を用いるプラズモニック光触媒は可能か?」、「汎用元素プラズモニック光触媒の還元力の限界はどこにあるか?」、「汎用元素プラズモニック光触媒のSPRを制御できるのか?」の3つの「問い」に近づくことをめざした。汎用元素金属ナノ粒子として、銅(Cu)を第一候補とした。Cuナノ粒子は長波長領域(600 nm付近)にSPRを示すことが知られているが、我々の知る限りにおいて、安定なプラズモニック光触媒として作動するという報告例はない。Cuの価格はAuの価格の約1万分の1であるため元素戦略上極めて有利である。一方で、Cuナノ粒子は酸素と反応して酸化物になりやすいという性質がある。そこで、ナノ粒子の保護に適した物質群の検討からはじめた。当初、Cuナノ粒子表面への選択的シェル層の形成は難しかったため、Auナノ粒子へのシェル導入を試み、クロム化合物が適していることを突き止め、その条件を幅広く検討し最適な条件を確定した。つぎに、Cuナノ粒子表面へのクロム化合物シェル層の形成を試み、概ね、再現性良くコアシェル化することができた。
2: おおむね順調に進展している
当初目的であった、Cuナノ粒子を安定化させるコアシェル構造の構築に成功した。Cuナノ粒子のコアシェル化がうまくいかない場合、Agをコアとする選択肢もあったが、今後はCuを中心に研究を進める。
合成したプラズモニック光触媒のキャラクタリゼーションを透過型電子顕微鏡(TEM)や可視紫外分光光度法(UV-vis)、X線光電子分光法(XPS)等の手法を用いて実施する。光触媒機能をベンジルアルコールの選択酸化、アルコールからの水素生成、水の完全分解反応等にて評価する。研究を進めていくと、全く新しいタイプのシェルがプラズモニック光触媒の電荷分離に有効であることが分かってきた。この点についても合わせて研究する。
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